特定技能外国人の労働時間・残業管理で注意すべきこと【企業向け・2026年最新版】
特定技能外国人の労働時間・残業管理の注意点を解説。36協定・割増賃金・フルタイム義務・労働時間の定期報告・複数雇用の注意点まで行政書士が企業向けにわかりやすく説明します。
導入
「特定技能外国人の残業代はきちんと払わなければならないのか」「労働時間の記録はどう残せばよいか」「日本人と同じ36協定でよいのか」——特定技能外国人を受け入れている企業の担当者から、こうしたご相談をよくいただきます。
特定技能外国人にも労働基準法が完全に適用されます。日本人と同様に36協定・割増賃金・休憩・休日の規定がすべて適用されます。「外国人だから残業代は不要」「時間外労働に制限はない」という考え方は法律上誤りです。加えて、定期届出では実際の労働時間・給与の支給総額を報告する義務があるため、労働時間管理が不適切だと届出の信頼性にも影響します。
この記事では、特定技能外国人の労働時間・残業管理における主要な注意点を解説します。
このページの要点
Q1. 特定技能外国人にも労働基準法が適用されますか? はい。特定技能外国人も日本人と全く同様に労働基準法が適用されます。労働時間・残業代・休憩・休日・有給休暇など、すべての規定が等しく適用されます。
Q2. 特定技能外国人はフルタイム勤務が必要ですか? はい。特定技能はフルタイム(同等業務の日本人と同等の所定労働時間)での雇用が原則です。短時間・パートタイムでの受入れは認められていません。
Q3. 残業をさせる場合、36協定は必要ですか? はい。外国人であっても36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結・届出が必要です。36協定がない状態での時間外労働・休日労働は労働基準法違反になります。
Q4. 残業代の計算は日本人と同じですか? はい。割増率は日本人と同じです。時間外労働は25%増(月60時間超は50%増)、休日労働は35%増、深夜労働(22時〜5時)は25%増が原則です。
Q5. 定期届出で労働時間を報告する必要がありますか? はい。定期届出(年1回)では実労働日数・実労働時間・給与の支給総額・昇給率を月平均値で報告する義務があります。実態と乖離した数値を記載することは虚偽届出になります。
本文
労働基準法の適用
特定技能外国人を含む外国人労働者には、日本人と全く同様に労働基準法が適用されます。国籍・在留資格による区別はありません。
適用される主な規定は以下のとおりです。
- 法定労働時間:1日8時間・週40時間(変形労働時間制を採用している場合を除く)
- 休憩時間:労働時間が6時間超で45分・8時間超で1時間
- 週1日以上の休日
- 時間外労働・休日労働への割増賃金の支払い
- 有給休暇の付与(6か月経過後に10日)
- 36協定の締結・届出(時間外・休日労働を行わせる場合)
フルタイム勤務の義務
特定技能は、同じ職場で同種業務に従事する日本人従業員と同等の所定労働時間での雇用が必要です。
短時間・パートタイムでの受入れは認められていません。雇用契約書に所定労働時間を明記し、実態がそれと一致していることが重要です。
所定労働時間が短すぎると、在留資格申請・更新で問題になる場合があります。日本人従業員の所定労働時間を基準に設定してください。
36協定と時間外労働
36協定とは 時間外労働(残業)や休日労働を行わせるためには、事業場ごとに労働者の過半数を代表する者との間で「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です。
外国人であっても36協定の適用対象です。36協定で定めた時間の上限を超えた時間外労働は違法となります。
時間外労働の上限規制(2024年4月〜建設・運送なども適用) 2024年4月から建設業・運送業・医師にも時間外労働の上限規制が適用されました。特定技能「建設」「自動車運送業」で受け入れている企業は特に注意が必要です。
時間外労働の原則上限:月45時間・年360時間 特別条項を使っても:年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間
割増賃金の計算
時間外労働・休日労働・深夜労働には以下の割増賃金の支払いが必要です。
| 労働の種類 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(月60時間以内) | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 50%以上 |
| 休日労働 | 35%以上 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上 |
| 時間外+深夜 | 50%以上 |
| 休日+深夜 | 60%以上 |
外国人であることを理由に割増率を下げることはできません。日本人従業員と全く同じ割増率を適用することが必要です。
労働時間の記録と管理
記録の義務 使用者は労働者の労働時間を適切に管理・記録する義務があります(労働時間の把握に係るガイドライン)。打刻システム・タイムカード・出勤簿などで労働時間を客観的に記録することが求められます。
特定技能の定期届出との関係 定期届出(年1回・毎年4〜5月)では、外国人ごとの実労働日数・実労働時間の月平均値を報告します。記録がない・不正確な場合は、定期届出の記載内容に問題が生じます。また虚偽の記載は届出義務違反となります。
適切な記録管理のポイント
- 打刻システム・タイムカードで日々の出退勤時刻を記録する
- 残業・休日出勤の実績を別途記録する
- 外国人従業員の労働時間管理記録を少なくとも5年間保存する(賃金台帳との整合を維持)
有給休暇の付与
特定技能外国人にも、入社から6か月経過後(かつ所定労働日数の80%以上出勤)に有給休暇を付与する義務があります。
| 勤続年数 | 付与日数(フルタイムの場合) |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
年10日以上の有給休暇が付与された労働者には、年5日の有給休暇の取得が義務付けられています。外国人であっても例外ではありません。
一時帰国のための有給休暇取得については、支援計画書にも記載があるとおり、取得できる環境を整えることが義務的支援の一つです。
深夜・休日労働の注意点
特定技能外国人に深夜労働・休日労働をさせる場合も、日本人と同様に割増賃金の支払いが必要です。
外国人の中には深夜・休日に積極的に働きたい方もいますが、36協定の上限・時間外労働の上限規制の範囲内で管理することが重要です。割増賃金を支払っていれば労働時間の制限がなくなるわけではありません。
複数事業所での就労の注意点
特定技能外国人は原則として1社との雇用契約での就労が前提です。副業・兼業については認められていないのが原則です。
また複数の受入れ企業が1人の特定技能外国人を雇用するケースは認められていないため、労働時間管理は1社分のみが対象となります。
労働時間管理に関するよくある問題
残業代を「サービス残業」にしている 特定技能外国人への残業代不払いは労働基準法違反であり、在留資格の更新にも影響します。申告があれば労働基準監督署の調査につながる場合もあります。
定期届出の労働時間と実態が異なる 実際の労働時間が定期届出の記載と大きく乖離している場合は虚偽届出とみなされるリスクがあります。実態に即した記録・報告が重要です。
有給休暇の取得を事実上禁止している 外国人が一時帰国のために有給休暇を申請したにもかかわらず、理由なく拒否することは問題です。支援計画書には「一時帰国のための休暇取得を認める」旨の記載が求められています。
当事務所に相談できること
行政書士アーチ事務所では、特定技能外国人の労務管理に関して以下のサポートを提供しています。
- 定期届出の書類作成サポート:実労働時間・給与支給総額の記載を含む届出書類の作成をサポートします。
- 在留資格申請書類の作成・取次:雇用条件書の記載と実態の整合を確認した上で申請書類を作成します。
- 登録支援機関としての支援受託:定期面談での労働時間・労働条件の確認も実施します。
FAQ
Q1. 36協定は外国人労働者も含めて締結しますか? はい。36協定は事業場単位で締結するものです。外国人を含む事業場内の過半数代表者との間で締結します。
Q2. 特定技能外国人が残業を拒否した場合はどうすればよいですか? 36協定・就業規則に残業命令の規定があり、正当な業務上の必要性がある場合は残業を命じることができます。ただし外国人が残業を嫌がる理由(家庭の事情・健康上の問題など)を確認し、適切に対応することが重要です。
Q3. 有給休暇の買取は認められますか? 原則として有給休暇の買取は認められていません(ただし時効消滅する有給休暇や退職時の未使用有給の買取は例外的に可能です)。
Q4. 変形労働時間制を外国人に適用できますか? はい。就業規則・労使協定に基づく変形労働時間制は外国人にも適用できます。ただし変形労働時間制の内容(1か月・1年単位など)を外国人が理解できる言語で説明しておくことが重要です。
Q5. 深夜・休日の割増賃金を外国人本人に理解させるにはどうすればよいですか? 給与明細に割増賃金の内訳を記載し、母国語で説明することが有効です。入社時の雇用条件説明の際に、割増賃金の計算方法を具体例で示すことをおすすめします。
まとめ
特定技能外国人の労働時間・残業管理は日本人と全く同じルールが適用されます。フルタイム勤務の義務・36協定の締結・割増賃金の支払い・有給休暇の付与・定期届出での労働時間報告が主な注意点です。
「外国人だから」という特別扱いは法律上認められておらず、適切な管理が在留資格の更新継続にも直結します。
企業が次に確認すべきこと
- 36協定が締結・届出されているか確認する
- 残業代(割増賃金)が適切に計算・支払われているか確認する
- 労働時間の記録(タイムカード等)が適切に管理されているか確認する
- 定期届出の労働時間の記載が実態と一致しているか確認する
行政書士アーチ事務所では、特定技能の労務管理・在留資格申請をサポートしています。お気軽にご相談ください。
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