特定技能外国人が転職する場合の手続き【企業向け・2026年最新版】
特定技能外国人が転職する際の手続きを旧企業・新企業・外国人本人の三者に分けて解説。在留資格変更申請の流れ、転職時の条件、届出義務、注意点まで行政書士がわかりやすく説明します。
導入
「雇用していた特定技能外国人が転職したいと言っている。どんな手続きが必要か」「他社から特定技能外国人を採用したいが、どこから始めればよいか」——企業の担当者から、こうした相談を受けることがあります。
特定技能は、技能実習とは異なり転職が認められています。しかし転職は外国人本人が自由に行えるものではなく、新しい所属機関での在留資格変更許可申請が必要であり、旧企業・新企業それぞれに届出義務が生じます。手続きを正しく理解せずに進めると、外国人が就労できない期間が生じたり、申請が不許可になるリスクがあります。
この記事では、以下の3点を中心に解説します。
- 特定技能外国人が転職する際の条件と制限
- 旧企業・新企業・外国人本人それぞれが行うべき手続き
- 転職時に企業が注意すべきポイント
結論を先にお伝えすると、特定技能外国人の転職には在留資格変更許可申請が必要です。申請が許可されるまでは新しい企業での就労を開始できないため、採用スケジュールに余裕をもって手続きを進めることが重要です。
このページの要点
Q1. 特定技能外国人は自由に転職できますか? 同一分野内での転職であれば一定の条件のもとで可能です。ただし転職は「自由」ではなく、新しい受入れ企業での在留資格変更許可申請が必要です。申請が許可されるまでは新企業で就労を開始できません。異なる分野への転職も分野によっては可能ですが、試験合格など別途要件が必要です。
Q2. 転職時に旧企業が行うべき手続きは何ですか? 雇用契約終了に係る随時届出を入管に提出する義務があります。また、外国人本人が転職活動をしやすいよう、退職証明書の発行や支援記録の引き継ぎなどに協力することが求められます。非自発的離職の場合は転職支援(次の就職先あっせんなど)も支援計画上の義務です。
Q3. 転職先企業が行うべき手続きは何ですか? 在留資格変更許可申請(受入れ企業として)の手続きが必要です。新しい雇用契約書・支援計画書・企業の適格性書類などを準備し、入管に申請します。協議会加入の要件なども改めて確認が必要です。
Q4. 転職の申請中は就労できますか? 原則として、申請中は新しい企業での就労を開始できません。許可が下りてから就労を開始することになります。採用予定日を設定する際は、申請から許可までの審査期間を考慮したスケジュールが必要です。
Q5. 分野をまたいだ転職はできますか? 原則として特定技能は分野ごとに在留資格が付与されており、異なる分野への転職には新たな技能試験への合格など別途要件が必要です。同一分野内であれば比較的スムーズに転職できる場合が多いですが、分野や業務区分の確認が必要です。
本文
特定技能外国人の転職の特徴
特定技能は、技能実習とは異なり、制度上転職が認められています。これは「労働力確保」を目的とした制度設計の特徴の一つです。
ただし、転職が認められるといっても無制限ではありません。以下のような制約があります。
- 転職先での在留資格変更許可申請が必要
- 許可が下りるまで転職先での就労不可
- 分野をまたぐ場合は追加の試験要件が必要になる場合がある
- 通算在留期間(1号は5年上限)は転職しても引き継がれる
- 申請中の転職は原則不可
企業として転職者を受け入れる際も、初めての受入れと同様の手続きと準備が必要です。
転職の条件:外国人本人側
転職を希望する特定技能外国人が満たすべき主な条件は以下のとおりです。
①転職先の分野・業務区分の要件を満たすこと 同一分野内の転職であれば、引き続き同じ技能試験の合格が有効です。ただし分野内でも業務区分が異なる場合は、対応する試験合格が別途必要になる場合があります。
異なる分野への転職を希望する場合は、転職先分野の技能試験に改めて合格する必要があります。
②通算在留期間の残存を確認 特定技能1号は通算5年が上限です。転職しても通算在留期間は引き継がれます。残存期間が短い場合は、転職後に就労できる期間が限られることになります。採用する側の企業にとっても、採用前に確認すべき重要な点です。
③国籍別の要件確認 国籍によっては、転職時に送出国側の手続き(ベトナムなど)が必要な場合があります。二国間協定のある国籍の外国人は、転職に際して追加の確認が必要です。
転職の条件:新しい受入れ企業側
転職者を受け入れる企業にも、通常の受入れと同様の要件が求められます。
- 欠格事由に該当しないこと
- 適正な雇用契約の締結
- 支援計画の策定・実施(または登録支援機関への委託)
- 協議会への加入(加入済みでない場合)
- 届出義務の履行
転職者だからといって手続きが簡略化されるわけではありません。初めての受入れと同様に書類を準備する必要があります。
三者それぞれの手続き
転職には旧企業・新企業・外国人本人の三者それぞれが行うべき手続きがあります。
#### 旧企業(離職元)が行うべき手続き
①雇用契約終了に係る随時届出 雇用契約が終了した場合は、随時届出として入管に届け出る必要があります。届出の時期は契約終了から14日以内とされています(届出要件は変更される場合があります。最新情報を確認してください)。
②ハローワークへの外国人雇用状況の届出 雇用保険の資格喪失届などと合わせて対応します。
③転職支援(非自発的離職の場合) 企業都合による離職(解雇・契約満了など)の場合は、支援計画に基づく転職支援(次の就職先あっせん・推薦状の提供など)を実施する義務があります。
④支援記録・面談記録の引き継ぎへの協力 外国人本人や新しい登録支援機関が引き継ぎを求めた場合は、これまでの支援実施記録の提供に協力することが望ましいです。
#### 新企業(転職先)が行うべき手続き
①雇用契約の締結 外国人が理解できる言語での雇用契約書作成が必要です。日本人と同等以上の報酬・労働条件を確保します。
②支援計画書の作成 1号特定技能外国人の場合、新しい支援計画書を作成します(最新様式を使用)。登録支援機関に委託する場合は委託契約も必要です。
③在留資格変更許可申請(入管への申請) 必要書類を準備し、管轄の入管に申請します。許可が下りてから就労を開始します。
④協議会への加入確認・手続き すでに同一分野の協議会に加入している場合でも、外国人情報の登録更新が必要な場合があります。分野によって手続きが異なるため確認が必要です。
⑤ハローワークへの外国人雇用状況の届出 就労開始後、ハローワークへの届出が必要です。
#### 外国人本人が行うべき手続き
①在留カードの所属機関変更届出 転職先が決まり在留資格変更が許可されたら、在留カードの記載内容(所属機関)の変更に係る届出が必要です。
②国籍国の手続き(国籍による) ベトナムなど二国間協定のある国籍の外国人は、転職時に送出国側の手続きが必要な場合があります。
申請から就労開始までのスケジュール感
在留資格変更許可申請の審査には数週間〜2か月程度かかる場合があります。採用予定日を設定する際は、以下のスケジュールを目安に余裕をもって準備を進めることが重要です。
- 採用決定〜書類準備完了:2〜4週間程度
- 申請〜審査完了:数週間〜2か月程度(地域・繁忙期により異なる)
- 許可後・就労開始:許可が下りてから就労開始
許可が下りるまでの間、外国人本人は収入が途絶える可能性があります。採用が決まった段階でこの点を本人に説明しておくことが重要です。
転職時のよくある注意点
①許可前の就労は違法 在留資格変更許可が下りる前に新企業で就労させることは、不法就労にあたります。「採用が決まったから先に働いてもらう」ということは絶対に避けてください。
②通算在留期間の残存確認 転職者を採用する場合、その外国人がすでに何年間特定技能で在留しているかを確認することが重要です。残存期間が短い場合は採用後すぐに通算上限を迎える可能性があります。採用前に在留カードを確認し、通算在留期間を把握しておきましょう。
③申請中の転職は原則不可 別の申請が審査中の場合、その申請が完了するまでは転職のための変更申請は原則できません。タイミングの管理が重要です。
④分野・業務区分の確認 転職前の分野と転職先の分野が異なる場合、または同一分野でも業務区分が異なる場合は、対応する試験への合格が必要なことがあります。採用前に分野・業務区分を丁寧に確認してください。
⑤登録支援機関の変更手続き 現在委託している登録支援機関との契約が終了し、新企業で新たに登録支援機関に委託する場合は、引き継ぎを含めた手続きが必要です。更新申請が近い場合は特に早めに進めることが重要です。
育成就労制度との関係(参考)
2024年3月に創設が決定され、2027年6月までに施行予定の「育成就労」制度では、一定期間後に特定技能1号相当の水準への移行が想定されています。転籍(転職)要件の緩和も制度設計に含まれており、今後の転職に関するルールに影響が出る可能性があります。制度施行後は最新情報の確認が必要です。
当事務所に相談できること
行政書士アーチ事務所では、特定技能外国人の転職に関して以下のサポートを提供しています。
- 在留資格変更申請のサポート:転職先企業として必要な書類の整理・作成・申請取次を行います。
- 通算在留期間の確認・管理:採用前の残存期間確認から、2号移行を見据えた計画立案をサポートします。
- 支援計画書の作成:新しい所属機関としての支援計画書作成(最新様式対応)をサポートします。
- 登録支援機関としての受託:転職後の支援業務を一括して受託します。引き継ぎへの対応も可能です。
- 有料職業紹介を活かした採用支援:特定技能外国人の転職受入れを採用段階からサポートすることも可能です。
「転職者を採用したいが、手続きが不安」「どのくらいの期間と書類が必要か整理したい」という段階からご相談ください。
FAQ
Q1. 特定技能外国人が突然退職を申し出た場合、どうすればよいですか? 自己都合退職の場合は、受入れ困難の届出は不要となりました(2025年4月改正)。ただし雇用契約終了に係る随時届出は引き続き必要です。また、本人が次の就職先を見つけやすいよう、退職証明書の発行など協力することが望ましいです。
Q2. 転職者を採用する際、初回受入れと手続きは同じですか? 基本的な手続きの流れは同じです。ただし転職者の場合は、通算在留期間の残存確認・前の雇用先での支援記録の確認など、転職特有の確認事項があります。
Q3. 同じ分野内の転職なら試験は不要ですか? 同一分野内の転職であれば、以前取得した技能試験・日本語試験の合格は引き続き有効です。ただし分野内でも業務区分が変わる場合は別途確認が必要なことがあります。
Q4. 転職申請中、外国人は他のアルバイトなどをできますか? 在留資格変更許可申請中は、資格外活動許可がない限り就労できません。申請中の生活費の問題は事前に本人と話し合っておくことが重要です。
Q5. 転職後も同じ登録支援機関を使えますか? 新しい受入れ企業が同じ登録支援機関と委託契約を締結すれば、引き続き利用することは可能です。ただし委託契約は新企業が改めて締結する必要があります。
Q6. 転職先の分野が元の分野と異なる場合、試験を受け直す必要がありますか? 原則として、転職先の分野に対応する技能試験への合格が必要です。日本語試験は有効な合格証明があれば改めて受験不要の場合がありますが、分野によって異なります。
Q7. 企業が廃業した場合、その特定技能外国人はどうなりますか? 企業の廃業・倒産などの場合は、特定技能外国人は転職先を探すことになります。このような非自発的離職の場合、旧企業(清算人など)には転職支援の義務がありますが、現実的には困難なケースも多く、外国人本人が相談できる機関(登録支援機関・行政書士など)を事前に把握しておくことが重要です。
Q8. ベトナム国籍の外国人が転職する場合、追加の手続きはありますか? はい。日本とベトナムの二国間協定に基づき、転職時にもベトナム側の手続きが必要な場合があります。具体的な手続きはベトナムの認定送出機関や関係機関にご確認ください。
まとめ
特定技能外国人の転職は制度上認められていますが、在留資格変更許可申請・旧企業の随時届出・新企業での書類準備など、三者が関わる複数の手続きが必要です。許可が下りるまでは新企業での就労を開始できないため、スケジュールに余裕をもって進めることが重要です。
また、通算在留期間の残存確認・分野の一致・国籍別の追加手続きなど、転職特有の確認事項も多くあります。
企業が次に確認すべきこと
- 採用予定の転職者の通算在留期間の残存確認
- 転職先の分野・業務区分が転職者の要件と一致しているか
- 在留資格変更許可申請に必要な書類の準備を開始する
- 審査期間を考慮した採用スケジュールを設定する
転職者の受入れ手続きや書類準備についてご不明な点がある企業様は、行政書士アーチ事務所へお気軽にご相談ください。申請書類の作成から支援計画の実施まで一貫してサポートいたします。
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