特定技能外国人の給与設定でトラブルを防ぐ方法【企業向け・2026年最新版】
特定技能外国人の給与設定でトラブルを防ぐ方法を解説。手取りと総支給の誤解・控除の説明・給与明細の多言語化・遅延・不払いのリスクまで企業担当者向けに行政書士が説明します。
導入
「外国人から『聞いていた給与と違う』と言われてトラブルになった」「控除の意味がわからないと不満を持たれた」「給与明細を渡しても内容を理解してもらえない」——特定技能外国人を受け入れている企業の担当者から、こうしたご相談をよくいただきます。
給与に関するトラブルは、特定技能外国人の早期離職の主要な原因の一つです。多くの場合、給与の金額そのものより「説明不足による誤解」「控除の内容が理解されていない」「手取りと総支給の違いが伝わっていない」という問題が根本にあります。
この記事では、給与設定時のトラブルを防ぐための具体的な方法を解説します。
このページの要点
Q1. 外国人の給与トラブルで最も多い原因は何ですか? 「手取り額と総支給額の違いが事前に説明されていない」ことが最も多い原因です。「月給20万円」と説明したにもかかわらず、実際の振込額が社会保険料・税金の控除後で大幅に少なく「話が違う」となるケースが多くあります。
Q2. 控除の内容はどのように説明すればよいですか? 雇用条件書・給与明細の交付時に、控除の種類(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税など)と各金額を外国人が理解できる言語で説明することが重要です。入社前の事前ガイダンスの段階で説明しておくことが理想的です。
Q3. 給与明細は日本語のみで渡してよいですか? 法令上の義務はありませんが、外国人本人が内容を理解できるよう母国語または英語での説明・翻訳を行うことが重要です。日本語のみの給与明細では控除の意味が理解されないままトラブルになるリスクがあります。
Q4. 住居費・光熱費を給与から差し引く場合の注意点は何ですか? 実費相当額の範囲内での控除が原則です。市場家賃より著しく高い金額の控除は問題になります。また控除には労使協定の締結と事前の書面による同意が必要です(社会保険・税金は協定不要)。
Q5. 給与の支払いが遅延した場合、在留資格に影響しますか? はい。賃金の不払い・遅延は労働基準法違反であり、特定技能の受入れ機関の欠格事由に該当する可能性があります。在留資格の更新不許可につながるリスクがあります。
本文
給与トラブルの主な原因
特定技能外国人との給与トラブルは、以下の3パターンに集約されます。
①手取りと総支給の違いに関する誤解 「月給20万円」と提示した場合、外国人は「毎月20万円が振り込まれる」と理解することが多いです。実際には社会保険料・住民税・所得税などの控除後の振込額は14〜17万円程度になるケースもあります。この差について事前に説明がないとトラブルになります。
②控除の内容への不満・不信感 日本の社会保険制度を知らない外国人にとって、給与から多くの金額が「引かれる」ことへの不信感が生じやすいです。「何のための控除か」「なぜこんなに引かれるのか」という疑問に答えられる説明体制が必要です。
③給与明細の内容が理解できない 日本語のみの給与明細では、外国人本人が各項目の意味を理解できず「間違いではないか」という疑念が生じます。
トラブルを防ぐための事前説明
①雇用条件書・事前ガイダンスでの説明 採用時・事前ガイダンス時に以下を外国人が理解できる言語で具体的に説明します。
- 総支給額(基本給・各種手当の内訳)
- 控除の種類と概算額(社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税)
- 実際の振込額(手取りの目安)
- 給与支払日・支払方法(銀行振込の場合は口座開設が必要なことも伝える)
「月給○○万円、手取りは約○○万円程度になります」という形で具体的な数字で説明することが最も効果的です。
②入社前に給与計算の具体例を示す 雇用条件書に控除の概算額を記載した「給与シミュレーション表」を母国語で作成し、入社前に渡すことで誤解を防ぐことができます。
給与明細の工夫
多言語給与明細の作成 給与明細の各項目名に母国語または英語の対訳を追記するだけでも、外国人の理解が大幅に向上します。
主な項目の対訳例(英語):
| 日本語項目 | 英語 |
|---|---|
| 基本給 | Basic Salary |
| 時間外手当 | Overtime Allowance |
| 通勤手当 | Commuting Allowance |
| 健康保険料 | Health Insurance |
| 厚生年金保険料 | Employees' Pension Insurance |
| 雇用保険料 | Employment Insurance |
| 所得税 | Income Tax |
| 住民税 | Resident Tax |
| 差引支給額(手取り) | Net Payment |
給与明細交付時の口頭説明 給与明細を渡す際に、担当者が簡単な説明を添えることで外国人の安心感が高まります。初回は特に丁寧に説明することが重要です。
控除の説明ポイント
外国人が特に疑問を持ちやすい控除の説明ポイントを整理します。
社会保険料(健康保険・厚生年金)
- 何のためのものか(医療費の一部負担・将来の年金)
- 会社も同額を負担していること
- 厚生年金は帰国後に脱退一時金として一部返金を受けられること
住民税
- 前年の所得に基づいて課税されること
- 入社1年目は住民税が引かれないことが多い(翌年6月から天引き開始)
- 退職時に未払い分の一括徴収が発生する場合があること
所得税
- 毎月の概算額を天引きし、年末調整で精算されること
- 年末調整の仕組みと必要書類(扶養控除申告書など)の説明
住居費・光熱費等の控除
会社が外国人に住居を提供し、その費用を給与から控除する場合の注意点は以下のとおりです。
控除できる金額の範囲 実費相当額(市場家賃・光熱費の実費)の範囲内が原則です。市場家賃より著しく高い金額の控除は労働基準法上の問題になります。
労使協定の締結が必要 住居費・光熱費などの任意控除(法定控除以外)は、労使協定を締結した上で行う必要があります(賃金の全額払いの原則の例外)。
書面による事前の同意 控除の内容・金額を書面(外国人が理解できる言語)で示し、本人の同意を得ることが重要です。入社前に説明し、雇用条件書に明記することをおすすめします。
不当に高い控除はトラブルの原因 市場価格より著しく高い住居費・光熱費の控除は、実質的な賃金の不当減額とみなされトラブルの原因になります。客観的な根拠のある金額設定が必要です。
賃金の遅延・不払いのリスク
労働基準法上の義務 賃金は毎月1回以上・一定の期日に・全額を・通貨で・直接本人に支払う義務があります(賃金支払いの5原則)。
遅延・不払いが発生した場合:
- 労働基準監督署への申告・調査
- 未払い賃金の支払命令・罰則
- 特定技能の受入れ機関の欠格事由への該当リスク
- 在留資格更新不許可のリスク
外国人は日本の労働機関への相談方法を知らないケースもありますが、支援計画書に基づき労働基準監督署・ハローワークなどの外部相談窓口を案内する義務があります。
銀行口座の開設サポート 給与を銀行振込にする場合は、外国人本人が銀行口座を開設していることが前提です。入国後、銀行口座開設の支援(同行・書類準備のサポート)を生活支援の一環として行うことが重要です。
給与設定の見直しタイミング
昇給のルールを明確に 雇用条件書に昇給の条件・時期・基準を明記しておくことで、「いつ昇給するのか」「なぜ昇給しないのか」という不満を予防できます。特に建設分野では毎年の昇給が義務化されています。
最低賃金の改定への対応 毎年10月頃に地域別最低賃金が改定されます。改定後に現在の給与が最低賃金を下回っていないかを確認し、必要に応じて給与を見直すことが必要です。
当事務所に相談できること
行政書士アーチ事務所では、特定技能外国人の給与設定・雇用条件整備に関して以下のサポートを提供しています。
- 雇用条件書の作成・確認:控除の説明・昇給条件の明記を含む雇用条件書の整備をサポートします。
- 事前ガイダンスの実施:登録支援機関として、給与・控除の内容を外国人が理解できる言語で説明します。
- 定期面談での確認:定期面談で給与への理解・不満の有無を定期的に確認します。
- 在留資格申請書類の確認:給与設定が日本人同等以上の要件を満たしているかを確認した上で申請書類を作成します。
FAQ
Q1. 給与シミュレーション表はどのように作ればよいですか? 基本給・各種手当の合計(総支給額)から社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)・所得税の概算額を差し引いた手取りの目安を示す表です。Excel等で作成し母国語に翻訳して渡すことで、入社前に誤解を防ぐことができます。
Q2. 住民税の一括徴収とは何ですか?退職時に問題になりますか? 退職時に当年度の住民税残額を一括で天引きする場合があります。退職する外国人にとって突然の大きな控除となり「騙された」と感じるケースがあります。退職予告時に一括徴収の可能性と概算額を事前に説明しておくことが重要です。
Q3. 外国人が「給与が少なすぎる」と言ってきた場合はどうすればよいですか? まず給与明細を一緒に確認し、総支給額・各控除額・手取り額を丁寧に説明します。日本人同等以上の給与が支払われているかどうかを確認し、適切な水準であることを説明することが重要です。
Q4. 賞与は外国人にも支給しなければなりませんか? 日本人に賞与を支給している場合は、外国人であることを理由に支給しないことは差別的な扱いとして問題になります。支給条件・支給額の算定方法を日本人と同様に適用することが重要です。
Q5. 給与を現金払いにすることはできますか? はい、現金払いは可能です(賃金の直接払いの原則)。ただし銀行振込のほうが記録が残り管理しやすいため、銀行口座を開設した後は振込払いに切り替えることをおすすめします。
まとめ
特定技能外国人の給与トラブルの根本は、ほとんどの場合「説明不足による誤解」です。総支給額と手取りの違い・控除の内容・昇給ルールを、採用時から外国人が理解できる言語で丁寧に説明することがトラブル防止の基本です。
給与明細の多言語化・控除の事前説明・住居費控除の労使協定締結など、具体的な対策を実施することで外国人との信頼関係を維持できます。
企業が次に確認すべきこと
- 採用時・事前ガイダンスで総支給額と手取りの違いを説明しているか確認する
- 給与明細の各項目に対訳(英語または母国語)を追加することを検討する
- 住居費等の任意控除について労使協定を締結しているか確認する
- 最低賃金の改定後に現在の給与水準が基準を下回っていないか確認する
行政書士アーチ事務所では、特定技能外国人の雇用条件整備・在留資格申請をサポートしています。お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
行政書士アーチ事務所
行政書士・申請取次行政書士
大阪市を拠点に、ビザ申請・在留資格手続き、特定技能、自社支援切り替え、外国人雇用を全国対応でサポート。
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01
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