LABOR COMPLIANCE
会社が保管すべき労務書類11選
労基署・年金機構の調査にも対応できるよう、会社が整備・保管すべき書類を整理します。
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日本で会社を運営するにあたり、労働法・社会保険関連法令に基づいて整備・保管が義務または推奨される書類は複数あります。 これらを適切に管理していない場合、労働基準監督署・労働局・日本年金機構・ハローワークなどの調査・是正勧告の対象となるリスクがあります。
本記事では、外国人経営者・外資系企業の人事担当者を含む、日本で会社を経営するすべての方を対象に、必要書類の内容と管理のポイントをわかりやすく解説します。
目次
- 労働契約書・労働条件通知書
- 就業規則
- 賃金台帳
- 出勤簿(タイムカード等)
- 年次有給休暇管理簿
- 36協定
- 健康診断個人票
- 外国人雇用関連書類
- 労働保険・社会保険関連書類
- 従業員個人情報管理ファイル
- 労働者名簿
1. 労働契約書・労働条件通知書
すべての従業員に対して、雇用時に書面で労働条件を明示することは、労働基準法第15条が定める法的義務です。
明示が必要な主な事項
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労働契約期間 | 有期・無期の別 |
| 就業場所・業務内容 | 変更範囲を含む |
| 所定労働時間・休憩・休日 | 具体的な時間数 |
| 賃金 | 計算方法・支払い方法・支払い日 |
| 退職に関する事項 | 解雇事由を含む |
外国人従業員に交付する場合は、本人が理解できる言語での説明が推奨されます。 英語・中国語・ベトナム語等に対応した書式を用意しておくと、後のトラブル防止に有効です。
2. 就業規則
常時10人以上の従業員を雇用する会社には、就業規則の作成・届出が労働基準法第89条により義務付けられています。
必須記載事項
- 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定・計算・支払いに関する事項
- 退職・解雇に関する事項
手続き
- 従業員代表の意見聴取(意見書の添付が必要)
- 所轄の労働基準監督署へ届出
10人未満の場合でも、就業規則を整備することで労使間のトラブルを未然に防ぐ効果があります。作成を強くお勧めします。
3. 賃金台帳
賃金台帳は、労働基準法第108条により、全従業員分の作成・保管が義務付けられています。保存期間は最終記載から5年間(当面3年間)。
記載必須事項
- 氏名・性別・賃金計算期間
- 労働日数・労働時間数・時間外労働時間数
- 基本給・各種手当・賞与の金額
- 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税の控除額
給与計算ソフトのデータ出力でも要件を満たすことが多いですが、必要項目が網羅されているか定期的に確認してください。
4. 出勤簿(タイムカード等)
出勤・退勤時刻、休憩時間、実労働時間、時間外労働時間、欠勤・遅刻・早退の状況を記録・保管します。保存期間は5年間(当面3年間)。
時間外労働が発生している場合、出勤簿の記録内容は36協定の上限時間と整合していなければなりません。タイムカードや勤怠管理システムのデータがそのまま証拠となることを意識した運用が必要です。
5. 年次有給休暇管理簿
2019年4月施行の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員については、年5日の取得義務と管理簿の整備が法令上の要件となっています。
管理簿の記載内容
- 有給休暇の付与日・付与日数
- 取得した日付・日数
- 基準日(付与日)
6. 36協定
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働や、法定休日の労働をさせる場合は、36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結・届出が必要です(労働基準法第36条)。
締結・届出の流れ
- 従業員の過半数を代表する者と協定を締結
- 所轄の労働基準監督署へ届出(有効期限は最長1年)
- 上限時間:月45時間・年360時間(特別条項あり)
36協定の未締結・未届出のまま時間外労働をさせることは、労働基準法違反となります。
7. 健康診断個人票
労働安全衛生法第66条により、会社は従業員に対して健康診断を実施する義務があります。
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 雇入れ時 | 採用前後に実施 |
| 定期(毎年1回) | 全従業員対象 |
| 深夜業・有害業務従事者 | 6か月ごと |
健康診断結果は5年間保存が必要です。異常所見者に対する医師の意見聴取と必要な措置も義務です。
8. 外国人雇用関連書類
外国人従業員を雇用する場合は、在留カード等を確認し、在留資格と従事する業務内容が適合しているかを確認する法的義務があります。
確認・保管すべき書類
- 在留カード(表裏のコピー)
- 在留資格・在留期限の確認記録
- 就労制限の有無の確認記録
- 雇用保険届出(外国人雇用状況の届出:ハローワーク)
不法就労させた場合、雇用主にも不法就労助長罪(入管法第73条の2)が適用される可能性があります。 在留期限の更新時期も会社側で把握・管理することを強くお勧めします。
9. 労働保険・社会保険関連書類
会社は従業員を雇用した時点で、以下の手続きを行い、関連書類を保管する義務があります。
| 種別 | 手続き | 届出先 |
|---|---|---|
| 労働保険 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 |
| 雇用保険 | 被保険者資格取得届・喪失届 | ハローワーク |
| 健康保険・厚生年金 | 被保険者資格取得届・喪失届 | 年金事務所 |
10. 従業員個人情報管理ファイル
法令上の義務ではありませんが、以下の情報を一元管理することで、給与計算・各種手続きが円滑になります。
- 本人確認書類(マイナンバーカード・在留カード等のコピー)
- 銀行口座情報
- 住民税特別徴収に関する書類
- 緊急連絡先情報
個人情報は個人情報保護法に基づき、適正に管理・安全に保管する必要があります。
11. 労働者名簿
労働基準法第107条により、すべての事業者は労働者名簿の作成・保管が義務付けられています。保存期間は退職・死亡後3年間(当面)。
記載事項
- 氏名・生年月日・住所
- 入社年月日・従事する業務の種類
- 退職・解雇・死亡の年月日とその事由
調査・是正勧告への対応と保管の実務
上記の書類は、以下の目安で保管・管理することをお勧めします。
| 書類 | 保存期間 |
|---|---|
| 労働者名簿 | 退職後3年(※5年に延長予定) |
| 賃金台帳 | 最終記載から5年(当面3年) |
| 出勤簿 | 5年(当面3年) |
| 健康診断個人票 | 5年 |
| 36協定届 | 有効期間終了後3年 |
労働基準監督署・日本年金機構・ハローワークの調査が入った場合、これらの書類を速やかに提示できる体制が整っているかどうかが、是正勧告の有無に直結します。
まとめ
日本の労働法令は複雑で、かつ近年改正が続いています。特に外国人経営者や外資系企業にとっては、法令の把握自体が大きな負担となりえます。
当事務所では、在日外国人・外資系企業の労務コンプライアンス整備、就業規則・各種規程の作成、外国人雇用に関する在留資格確認・申請手続きまで、多言語(日本語・英語・中国語)でサポートしています。
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*本記事は2026年6月時点の法令に基づいています。法改正等により内容が変更となる場合があります。最新情報は厚生労働省・法務省のウェブサイトをご確認ください。*
*執筆:社会保険労務士アーチ事務所(大阪)*