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従業員が逮捕されたら会社はどう対応すべきか|就業規則・休職・懲戒処分の実務を社労士が解説

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突然、自社の従業員が逮捕されたという連絡を受けた場合、会社はどのように対応すればよいのでしょうか。

「すぐに解雇すればいい」という判断は危険です。 手続きを誤ると不当解雇として争われるリスクがあります。本記事では、労務管理の観点から会社がとるべき初動対応と、事前の就業規則整備のポイントを解説します。

なお、損害賠償請求・刑事手続きへの対応・メディア対応など法的判断が必要な事項については、弁護士に相談することをお勧めします。


従業員が逮捕されたときの初動対応

ステップ1:事件の概要を確認する

逮捕された従業員が、どのような犯罪行為をしたのかを把握します。

  • 業務中の行為か、私的な時間帯の行為か
  • 被疑事実の内容(横領・暴力・窃盗等)
  • 被害者が存在するか、会社が被害者となっているか

業務中の事件で第三者に損害が及んだ場合は、会社に「使用者責任」が生じる可能性があります。この点は弁護士に確認してください。

ステップ2:逮捕・勾留場所を確認する

逮捕された従業員本人は、外部への連絡手段がありません。弁護人または家族からの連絡を通じて、拘束されている場所・状況を確認します。

ステップ3:今後の見通しを確認する

弁護人から連絡があった場合は、以下を確認しておきます。

  • 起訴される見通しか、不起訴となる可能性があるか
  • 身柄拘束がいつまで続くか(逮捕から起訴前の最長23日間)
  • 従業員本人の認否(犯罪事実を認めているか否か)

逮捕期間中の出勤扱いはどうするか

逮捕された従業員は、警察・検察による身柄拘束の間、出社できません。この期間の取り扱いは慎重に判断する必要があります。

選択肢1:有給休暇の消化

弁護人・家族を通じて本人が有給休暇の使用を希望している場合は、有給休暇を適用します。

選択肢2:休職扱い

就業規則に休職制度がある場合は、休職命令を出す方法があります。休職期間中は給与の支給を要しませんが、欠勤扱いにもなりません。休職制度がない会社は、この機会に導入を検討することをお勧めします。

選択肢3:欠勤扱い

弁護人・家族から連絡があった場合に、会社の一方的な判断で「無断欠勤扱い」とすることは避けるべきです。後々のトラブルになるリスクがあります。


「すぐに解雇できる」は誤解です

逮捕イコール解雇はできない

従業員が逮捕されたとしても、逮捕の事実だけで直ちに懲戒解雇することはできません。

日本では「推定無罪の原則」があり、有罪が確定するまでは犯罪者として扱うことはできません。誤認逮捕・不起訴・無罪判決もありえます。

懲戒解雇が認められるためには、以下の条件が必要です。

  • 懲戒事由に該当する事実が十分に認められること(有罪判決・起訴・本人が事実を認めているなど)
  • その行為が「著しく企業秩序を乱した」といえる程度のものであること
  • 就業規則に懲戒解雇事由として規定されていること

私生活上の行為でも懲戒事由となりうる

勤務時間外・私的な行為であっても、会社の社会的評価を著しく毀損する場合は懲戒事由となりえます。ただし、業務との関連性・会社への影響の程度によって判断が変わります。

懲戒処分は段階的に検討する

懲戒処分は解雇だけではありません。事案の重大性に応じて、以下の選択肢を検討します。

処分の種類内容
戒告・譴責厳重注意・始末書提出
減給就業規則の定める範囲内で減給
降格・出勤停止地位や勤務の変更
諭旨解雇退職を勧告したうえでの解雇
懲戒解雇最も重い処分(退職金不支給の場合も)

懲戒解雇は最も重い処分であり、要件が厳しく判断されます。 処分を行う前に、専門家(社労士・弁護士)に相談することを強くお勧めします。


就業規則で事前に整備すべき事項

このような事態に備えて、就業規則に以下の規定を整備しておくことが重要です。

懲戒事由の規定

「刑事事件で逮捕・起訴された場合」「有罪判決を受けた場合」「会社の社会的信用を著しく損なう行為をした場合」などを懲戒事由として明記します。業務上の犯罪と私生活上の犯罪を分けて規定するとより明確です。

休職規定の整備

逮捕・勾留・刑事裁判等を理由とする休職制度を定めておきます。休職期間の上限・休職中の賃金・休職満了時の扱いも明記します。

欠勤・無断欠勤の定義

「会社が連絡を把握している場合は無断欠勤としない」などの規定を設けておくと、トラブルを防げます。


事前に決めておくべき社内対応ルール

就業規則の整備に加え、以下の事項を社内ルールとして定めておくことをお勧めします。

  • 逮捕の連絡を受けた場合の報告先・窓口担当者
  • 弁護人・家族との連絡窓口の一本化
  • 社内での情報共有範囲(必要最小限に絞ることが重要)
  • 外部(取引先・マスコミ等)への対応方針
  • 有罪確定後の処分の判断基準

まとめ

  • 逮捕の事実だけでは直ちに懲戒解雇はできない
  • 身柄拘束中の欠勤は有給休暇・休職制度を活用する
  • 懲戒処分は事実確認と就業規則の規定を確認してから行う
  • 就業規則への懲戒事由・休職規定の整備が事前準備として重要
  • 損害賠償・法的判断が必要な場合は弁護士に相談する

就業規則の整備・懲戒処分の判断についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。


*本記事は2026年6月時点の法令に基づいています。個別の法的判断については弁護士にご相談ください。*

*執筆:社会保険労務士アーチ事務所(大阪)*