ARTICLE 15
36協定を出さずに残業させた場合のリスク|会社が受ける罰則と是正指導

「36協定って、届け出なくても実際には問題ないんじゃないの?」と思っている経営者は少なくありません。しかし、36協定なしで残業させることは立派な労働基準法違反であり、発覚した場合のリスクは決して小さくありません。
本記事では、36協定を未締結・未届出のまま残業させた場合に生じる具体的なリスクを解説します。
36協定なしの残業は労働基準法違反
労働基準法第32条は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させることを原則禁止しています。これを超えて働かせるためには、36協定の締結・届出が必要です(労働基準法第36条)。
36協定なしで時間外労働をさせた場合、労働基準法第119条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
具体的なリスク
リスク1:労働基準監督署からの是正勧告
労働基準監督署の調査(臨検監督)が入った際に36協定が未届出であることが判明した場合、是正勧告書が交付されます。是正勧告に従わない場合は、送検・起訴に至るケースもあります。
リスク2:刑事罰(懲役・罰金)
悪質と判断された場合、労働基準法違反として書類送検・起訴される可能性があります。法人の場合は両罰規定により、会社と代表者の双方が処罰対象となります。
リスク3:未払い残業代の遡及請求
36協定がなくても、時間外労働に対する割増賃金の支払い義務は発生します。退職した従業員から過去2〜5年分の未払い残業代を遡及請求されるリスクがあります。
残業代請求の時効は2020年4月以降に発生した賃金については5年(当面3年の経過措置)です。
リスク4:企業名の公表
厚生労働省は、重大な労働基準法違反を犯した企業名を公表する制度を設けています。公表された場合、採用活動・取引先との関係・社会的信用に深刻なダメージが生じます。
リスク5:助成金の不支給・返還
雇用関係の助成金を受給している会社が労働基準法違反を指摘された場合、助成金の支給停止・返還を求められることがあります。
発覚するきっかけ
36協定の未締結・未届出が発覚するきっかけは、調査だけではありません。
- 退職した従業員の申告:退職後に労働基準監督署へ申告するケースが多い
- 在職中の従業員の相談:労働組合・労働相談窓口への相談
- 労働保険・社会保険の調査:年金事務所・ハローワークの調査時に連携して発覚
- 定期監督:業種・規模に応じた定期的な立入調査
特に、退職した従業員による申告は非常に多く、「辞めた後に申告された」というケースは珍しくありません。
36協定を整備していても注意が必要なケース
上限時間を超えている
36協定を届け出ていても、協定で定めた時間数や法定上限(月45時間・年360時間等)を超えた時間外労働をさせている場合は違反となります。
更新を忘れている
有効期限が切れた36協定は無効です。更新手続きを忘れると、協定なしの状態になります。
協定の対象業務・対象者が実態と合っていない
協定書に記載した業務・対象労働者と実態が乖離している場合、有効な協定として認められないことがあります。
発覚した場合の対応
万が一、36協定の未届出を指摘された場合は、速やかに以下の対応を取ることが重要です。
1. 直ちに36協定を締結・届出する 2. 是正報告書を提出する 3. 未払い残業代がある場合は速やかに支払う 4. 再発防止策を講じる
自己申告・自主的な是正は、行政の対応において有利に働くことがあります。
まとめ
- 36協定なしの残業は労働基準法第119条違反(懲役または罰金)
- 是正勧告・送検・未払い残業代請求・企業名公表・助成金返還などのリスクがある
- 発覚のきっかけは退職者の申告が最も多い
- 協定を届け出ていても、上限超過・更新忘れは違反となる
- 問題を把握したら速やかな自主是正が重要
36協定の締結・届出・更新管理については、お気軽にご相談ください。
本記事は2026年6月時点の法令に基づいています。
執筆:社会保険労務士アーチ事務所(大阪)