ARTICLE 06
就業規則は何人から必要か|10人未満でも作るべき理由を社労士が解説

「就業規則って、うちの会社には必要ですか?」という質問をよく受けます。法律上の義務が発生する基準はありますが、それ以下の規模でも就業規則を整備することを強くお勧めします。
本記事では、就業規則の作成義務の基準と、小規模企業でも作るべき理由を解説します。
法律上の義務:常時10人以上
労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則の作成・届出が義務付けられています。
「常時10人以上」の数え方
- パート・アルバイト・契約社員も含めてカウントします
- 「常時」とは、常態として10人以上いる状態を指します(繁忙期だけ10人以上になる場合は含まない)
- 「事業場」単位で判断します(本店・支店それぞれで判断)
違反した場合
就業規則の作成・届出義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法第120条)。
10人未満でも就業規則を作るべき理由
法律上の義務がなくても、以下の理由から就業規則の整備を強くお勧めします。
理由1:労使トラブルの予防
就業規則がない場合、「言った・言わない」のトラブルが発生しやすくなります。遅刻・欠勤の扱い、残業のルール、退職の手続きなどを明文化しておくことで、トラブルを未然に防げます。
理由2:問題社員への対応
就業規則に懲戒規定がない場合、問題行動を起こした従業員を懲戒処分にすることが困難になります。解雇・減給・出勤停止などの懲戒処分は、就業規則に根拠規定がなければ原則として行えません。
理由3:助成金の受給要件
雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金等)の中には、就業規則の整備が受給要件となっているものがあります。
理由4:取引先・採用候補者への信頼性
就業規則が整備されていることは、企業としての管理体制が整っていることの証明になります。採用活動や取引においても信頼性向上につながります。
就業規則に必ず記載すべき事項
絶対的必要記載事項(必ず記載)
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合はその規定
- 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払い時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
相対的必要記載事項(定めがある場合は記載)
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金・最低賃金額
- 食費・作業用品等の負担
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償・業務外の傷病扶助
- 表彰・制裁の種類・程度
作成・届出の手順
1. 就業規則の原案作成(専門家への依頼が確実) 2. 従業員代表の意見聴取(意見書の作成) 3. 所轄労働基準監督署へ届出(意見書を添付) 4. 従業員への周知(掲示・配布・イントラネット掲載等)
就業規則は作成・届出だけでなく、従業員への周知が効力発生の要件です。周知されていない就業規則は法的効力がない場合があります。
よくある質問
Q. パート・アルバイト用に別の就業規則が必要ですか? 正社員と異なる労働条件を設ける場合は、パートタイム労働者向けの別規則または別途規定を設けることが推奨されます。
Q. ひな形をそのまま使っても大丈夫ですか? ひな形は出発点として使えますが、自社の実態に合わせた修正が必要です。実態と乖離した就業規則はトラブルの原因になります。
Q. 更新はどのくらいの頻度で必要ですか? 法改正のたびに内容を見直すことが必要です。近年は毎年のように関連法令の改正があるため、年1回の定期見直しをお勧めします。
まとめ
- 法的義務は常時10人以上の事業場
- 10人未満でも、トラブル予防・懲戒処分の根拠・助成金要件として就業規則の整備は実質的に必須
- 作成後は従業員への周知が必須(周知なければ効力なし)
- ひな形の流用は危険。自社の実態に合った内容にすることが重要
就業規則の作成・見直しについては、お気軽にご相談ください。
本記事は2026年6月時点の法令に基づいています。
執筆:社会保険労務士アーチ事務所(大阪)