ベトナム在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合|相続人もベトナムにいるケース

被相続人がベトナムに住んでいて、日本に不動産や預金だけが残っている場合の相続手続きを解説します。ベトナム法では父母も第一順位の相続人となり、日本にある不動産の準拠法については解釈が分かれています。財産の把握方法と期間の目安を整理します。

日本語简体中文繁體中文English

ベトナム在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合

かつて日本で働いていた、あるいは日本に不動産や口座を残したまま帰国された。そうした経緯で、ベトナムにお住まいだったベトナム籍の方が、日本に財産を残して亡くなるケースがあります。相続人もベトナムにいる。日本には財産だけがある。

押さえるべき点は2つです。 誰が相続人になるかがベトナム法で決まること。そして、日本の財産の全容をベトナムから把握しなければならないことです。

この記事の要点

  • 準拠法はベトナム法です。ベトナム民法680条1項が、相続は被相続人が死亡直前に国籍を有していた国の法によると定めています。
  • ベトナム法では、第一順位の相続人に配偶者・実父母・養父母・実子・養子が含まれます。 同順位の相続分は均等です。
  • 日本にある不動産が含まれる場合は、管轄の法務局への確認が必要です。
  • 日本にある財産の把握には、2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度が使えます。
  • ベトナムはアポスティーユ条約に加盟していません。 認証が必要な場合は領事認証の手続きになります。

1. 準拠法はベトナム法です

日本の法の適用に関する通則法第36条により、被相続人がベトナム籍であればベトナムの法律を見ることになります。

ベトナム民法680条1項は、相続は被相続人が死亡の直前に国籍を有していた国の法令に従って確定されると規定しています。日本法への反致は生じません。

日本にある不動産の扱いは法務局への確認が必要です

ベトナム民法680条2項は、不動産に関する相続権の行使は不動産所在地の法令に従って確定されると規定しています。

日本にある不動産が含まれる場合は、管轄の法務局に確認して進めます。 金融機関では、ベトナムの弁護士が作成した準拠法についての意見書を求められる場合があります。

2. 相続人の範囲

ベトナム民法651条は、法定相続人を次の順位で定めています。

順位相続人
第一順位配偶者、実父母、養父母、実子、養子
第二順位祖父母、兄弟姉妹、実孫
第三順位曾祖父母、伯父母、叔父母、甥、姪、曾孫

同順位の相続人の相続分は均等です。

日本の民法との最大の違いは、父母が第一順位に入る点です。 配偶者・子・父母が同時に相続人となります。養親・養子も実親・実子と同じ順位に入ります。

日本の法務局や金融機関に対しては、ベトナム法の条文とその日本語訳を提出して説明することになります。

法令は改正されることがありますので、実際の適用にあたってはその時点の条文を確認する必要があります。

3. 相続人の確定

ベトナム側の証明書で相続関係を証明します。

  • 出生証明書(Giấy khai sinh)
  • 婚姻証明書(Giấy chứng nhận kết hôn)
  • 死亡証明書(Giấy chứng tử)
  • 居住情報の確認書

紙の家族簿(Sổ hộ khẩu)は廃止され、居住情報は国家人口データベースで管理されています。

父母が存命かどうかの確認が必要になるため、収集すべき書類の範囲は日本の相続より広くなります。

被相続人が過去に日本に居住していた場合は、日本側にも記録が残っている可能性があります。住民票の除票や、出入国在留管理庁が保管する外国人登録原票が資料になります。

被相続人が外国籍で日本の戸籍がないため、法定相続情報一覧図は利用できません。

4. 日本にある財産の把握

被相続人がベトナムにおられた場合、日本にある財産の全容を相続人が把握できていないことがあります。郵便物を確認できず、どの銀行に口座があったかも分からない、という状態です。

2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度では、被相続人が全国のどこに不動産を所有していたかを法務局に一括照会し、証明書の交付を受けられます。不動産を所有している人またはその相続人が請求でき、全国どこの法務局でも、窓口・郵送・オンラインで請求できます。

未登記建物や、登記上の住所・氏名が現況と一致しない不動産は記録されない可能性があります。

日本で働いていた期間の給与振込口座が残っている場合もあります。心当たりのある金融機関に照会をかけていく作業が必要です。

5. ベトナムにいる相続人の署名

相続人がベトナム籍でベトナム在住であれば、ベトナムの公証事務所で署名について公証を受けます。

ベトナムはアポスティーユ条約に加盟していないため、認証が必要になった場合は、ベトナム外務省と日本の在外公館を経由する領事認証の手続きになります。日本の法務局や金融機関は、公証書に日本語訳を添えれば受理するのが一般的ですが、扱いは提出先によって異なります。

6. 日本の相続税

日本国内にある財産は、被相続人・相続人がいずれもベトナム籍・ベトナム在住であっても、日本の相続税の課税対象です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月です。

ベトナムには日本の相続税にあたる税目はなく、相続による財産の取得は個人所得税の枠組みで扱われます。近親者間の相続については非課税の措置があります。日本とベトナムで課税の仕組みが異なるため、それぞれの取り扱いについて税理士の確認が必要です。

7. 不動産を相続した後のこと

日本に不動産を相続した場合、相続登記(取得を知った日から3年以内、義務)を済ませた後も、固定資産税の納付、建物の管理、近隣への対応が続きます。

さらに、2026年4月1日から住所等変更登記が義務化されています。所有者は住所や氏名等を変更したときは変更があった日から2年以内に登記をしなければならず、正当な理由なく行わない場合は5万円以下の過料の適用対象となります。2026年4月1日より前に住所等を変更していた場合も、2028年3月31日までに変更登記が必要です。

8. 期間の見込み

全体で8か月から1年が目安です。

工程目安
法務局への確認と、ベトナム法の内容を示す資料の準備1〜2か月
日本にある財産の調査(所有不動産記録証明制度の利用を含む)1〜2か月
ベトナム側の証明書の取得(父母の存否の確認を含む)1〜2か月
日本語訳の作成数週間
遺産分割協議書の作成と公証、国際郵送1〜2か月
相続登記、金融機関ごとの提出と払戻し2〜3か月

提出先が領事認証や準拠法の意見書を求める場合、その期間が加わります。

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、在日外国人の方の在留資格申請をはじめとする手続きに携わってきました。技能実習・特定技能をはじめとする在留資格の実務を通じて、来日から帰国までの資料を扱っています。

  • 管轄の法務局への確認と、ベトナム法の内容を示す資料の準備
  • 所有不動産記録証明制度を用いた不動産の把握と、金融機関への照会
  • ベトナム側で取得すべき証明書の範囲の特定
  • 相続人の範囲の確認と相続関係説明図の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関ごとの証明資料一式の準備と、解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. ベトナムにいる父母も相続人になりますか。 A. ベトナム民法では第一順位に実父母・養父母が含まれます。配偶者や子と同時に相続人となります。

Q. 日本にある不動産はどちらの法律で判断しますか。 A. 管轄の法務局に確認して進めます。

Q. 被相続人がどこに不動産を持っていたか分かりません。 A. 所有不動産記録証明制度により、法務局に一括して照会できます。相続人からも請求できます。

Q. 日本の口座に残っているお金を受け取れますか。 A. 相続の手続きを経れば受け取れます。日本国内の口座への振込みが原則となるため、受け取り方については金融機関ごとの確認が必要です。

Q. 相続人全員がベトナムにいます。誰が日本の窓口とやり取りしますか。 A. 日本国内の専門家に委任していただくのが一般的です。委任状についても公証が必要になります。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の国籍・死亡日・最後の居住地と日本での就労・居住歴、相続人の人数・続柄・国籍(父母の存否を含む)、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

関連記事

  • 在日ベトナム人の親が亡くなり、相続人がベトナムにいる場合
  • 日本の不動産を相続した場合の流れ
  • 日本に財産がある場合の国際相続の基本
  • 日本の銀行口座を相続する手続き

日本の相続手続きで止まりそうな場合はご相談ください

相続人・財産・期限・必要書類を確認し、日本側で進めるべき順番を整理します。中国語での相談にも対応しています。

問い合わせページへ