日本人の親が亡くなり、ベトナム籍の相続人がベトナムにいる場合

被相続人が日本人で、相続人がベトナム籍かつベトナム在住の場合の相続手続きを解説します。続柄は日本の戸籍からたどれます。印鑑証明書の代わりに公証事務所での公証を用い、ベトナムはアポスティーユ条約に加盟していないため認証の扱いが異なります。

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日本人の親が亡くなり、ベトナム籍の相続人がベトナムにいる場合

被相続人は日本人で日本に住んでいた。相続人である自分はベトナム籍で、ベトナムに住んでいる——国際結婚をされた配偶者の方、日本国籍を取得しなかったお子さん、日本国籍を離脱された方などが該当します。

国籍は相続する権利に影響しません。問題になるのは証明の方法です。

この記事の要点

  • 被相続人が日本人であれば準拠法は日本法です。相続人がベトナム籍でも、相続人の範囲や相続分は日本の民法で判断します。
  • 相続人の続柄は、日本の戸籍からたどれます。 婚姻も出生も国籍喪失も、被相続人の戸籍に記載されます。
  • 戸籍で分からないのは、ベトナムにいる相続人の現在の氏名・生存・住所です。
  • ベトナムには印鑑登録制度がないため、印鑑証明書の代わりに公証事務所での公証を用います。
  • ベトナムはアポスティーユ条約に加盟していません。 認証が必要になった場合は、領事認証の手続きになります。

1. 準拠法は日本法です

日本の法の適用に関する通則法第36条は、相続は被相続人の本国法によるとしています。被相続人が日本国籍であれば日本法です。

相続人がベトナム籍であること、ベトナムに居住していることは、相続人の範囲にも相続分にも影響しません。日本の民法は相続人の国籍を要件としていません。

2. 相続人の確定は戸籍でできます

相続人が外国籍であっても、被相続人が日本人であれば、続柄は日本の戸籍からたどれます。

出来事戸籍への記載
外国籍の方との婚姻日本人配偶者の身分事項欄に、配偶者の氏名・国籍・生年月日とともに記載
子の出生親の身分事項欄に記載。子が日本国籍を持てば戸籍の構成員となる
日本国籍の離脱・喪失国籍喪失の事由と日付が記載され、その者は除籍される

ベトナム籍の配偶者がいることも、日本国籍を離脱したお子さんがいることも、被相続人の戸籍を見れば分かります。

戸籍で分からないこと

日本の戸籍は、外国籍の方のその後の身分関係を追いかけません。現在も生存しているか、氏名が変わっていないか、現在の住所はどこかは、日本の戸籍からは確認できません。

3. ベトナム側の証明書で補います

ベトナムでは、人民委員会や司法機関が身分関係の証明書を発行しています。

証明書内容
出生証明書(Giấy khai sinh)出生の登録、両親の氏名
婚姻証明書(Giấy chứng nhận kết hôn)婚姻の登録
死亡証明書(Giấy chứng tử)死亡の登録
居住情報の確認書現在の居住地の証明

紙の家族簿(Sổ hộ khẩu)は廃止され、居住情報は国家人口データベースで管理されています。現在の住所を証明する書類の名称と発行方法が以前とは変わっているため、古い情報に基づいて準備を進めないようご注意ください。

日本語訳を添付して日本の提出先に出します。

4. 署名証明を、どこで取得するか

印鑑登録証明書の代わりになるのは署名の証明です。相続人が日本国籍でも外国籍でも、実印と印鑑証明書の代わりに署名とその証明を用いるという点は変わりません。

違うのは発行元です。

相続人の国籍発行元
日本国籍在ベトナム日本国大使館・総領事館
日本国籍以外ベトナムの公証事務所(公証役場にあたる機関)

在外公館の署名証明は日本国籍の方向けの制度です。ベトナム籍の相続人は、公証事務所で署名について公証を受けます。

遺産分割協議書の完成は前提ではありません

公証には、日本語の遺産分割協議書に署名して公証を受ける形と、署名そのものについて公証を受ける形があります。後者は、協議書が完成していなくても取得できます。

アポスティーユは使えません

ベトナムはアポスティーユ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に加盟していません。 そのため、認証が必要になった場合はアポスティーユではなく、ベトナム外務省と日本の在外公館を経由する領事認証の手続きになります。

もっとも、日本の法務局や金融機関は、公証書に日本語訳を添えれば受理するのが一般的で、領事認証まで求められる場面は限られます。認証は一段階ごとに時間と費用がかかるため、必要かどうかは提出先によります。

5. 住所の証明

日本国籍の方が使える在留証明は、ベトナム籍の方は利用できません。

不動産を相続して所有権の登記名義人となる場合の住所の証明については、令和5年12月15日付け法務省民二第1596号通達(令和6年4月1日以後の申請に適用)が取扱いを定めています。外国に住所を有する外国人については、次のいずれかを添付します。

1. 本国または居住国の政府が作成した住所を証明する書面(日本の住民票の写しに相当するもの) 2. 本国または居住国の公証人が認証した宣誓供述書(氏名と住所が真実である旨を宣誓して署名したもの)+旅券の写し

旅券の写しは、氏名・有効期間の記載と写真のあるページを含む必要があります。宣誓供述書と一体になっていない場合は、原本と相違ない旨の記載と署名または記名押印が必要です。旅券をお持ちでない場合は、その旨の上申書と他の本人確認書面の写しを添付します。

外国語の書面には訳文を添付しますが、全文を訳す必要はありません。表題、氏名、住所、発行日、有効期間・有効期限、発行機関、証明する旨の記載といった証明に関係する部分以外は、翻訳を省略した旨を記載して省略できます。

個別の事案で何が住所証明情報として認められるかは、管轄の法務局に確認して進めることになります。

6. 日本国籍を離脱された方の場合

かつて日本人であった方は、除籍に国籍喪失の記載が残ります。被相続人との親子関係は日本の戸籍でたどれるため、続柄の証明は容易です。

論点になるのは、現在の氏名が戸籍の記載と一致しているかどうかです。氏名の表記が変わっている場合は、同一人であることを示す資料が必要になります。

7. 受け取り方

日本の預貯金の払戻しは、原則として日本国内の口座への振込みです。ベトナム在住の相続人が日本に口座を持っていない場合、海外送金に対応してもらえるかは金融機関ごとに異なります。ベトナム側の外貨管理の規制も考慮に入れる必要があります。

8. 相続税

日本国内にある財産は、相続人の国籍・住所にかかわらず日本の相続税の課税対象です。ベトナム在住であることを理由に対象外になることはありません。

国外にある財産まで日本の課税対象になるかどうかは、被相続人と相続人それぞれの住所・国籍・過去の居住歴によって変わります。相続人が外国籍で国外に居住している場合、判定が必要な論点です。

9. 期間の見込み

全体で5〜7か月が目安です。

工程目安
日本での戸籍収集、財産調査1〜2か月
戸籍で足りない部分の切り分けと、ベトナム側証明書の取得1か月前後
ベトナムの公証事務所での公証数週間
日本語訳の作成と国際郵送数週間
金融機関ごとの提出と払戻し1行あたり2週間〜1か月

提出先が領事認証を求める場合、その手続きの期間が加わります。

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、在留資格申請をはじめとする手続きに携わってきました。国際結婚や国籍に関する書類を日常的に扱っています。

  • 戸籍で足りる部分と、ベトナム側の資料で補う部分の切り分け
  • 日本の提出先が求める内容の確認と、公証事務所に依頼する内容の特定
  • 日本国内での戸籍収集と相続関係説明図の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関の解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. ベトナム籍でも日本の遺産を相続できますか。 A. できます。日本の民法は相続人の国籍を要件としていません。

Q. 在ベトナム日本国大使館で署名証明を受けられますか。 A. 在外公館の署名証明は日本国籍の方向けの制度です。ベトナム籍の方は公証事務所で公証を受けます。署名証明を使うこと自体は同じで、窓口が違います。

Q. アポスティーユを取ればよいのですか。 A. ベトナムはアポスティーユ条約に加盟していないため、アポスティーユは発行されません。認証が必要な場合は領事認証の手続きになります。

Q. 家族簿(Sổ hộ khẩu)が廃止されたと聞きました。 A. 紙の家族簿は廃止され、居住情報は国家人口データベースで管理されています。現在の住所の証明は、居住情報の確認書などによります。

Q. 相続人が日本とベトナムに分かれています。 A. 相続人の居住地が分かれていても手続きは進められます。それぞれ異なる書類で同じ協議書に参加します。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の死亡日、ご自身の国籍と被相続人との続柄、国籍取得や離脱の経緯、現在の氏名が戸籍の記載と一致しているか、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

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