台湾在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合|相続人も台湾にいるケース

被相続人が台湾に住んでいて、日本に不動産や預金だけが残っている場合の相続手続きを解説します。台湾法が適用され、財産の種類によって適用される法律が分かれることはありません。台湾の遺産税と日本の相続税の申告期限の違いも整理します。

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台湾在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合

かつて日本で暮らしていた、あるいは日本に投資用の不動産を持っていた。そうした経緯で、台湾にお住まいだった台湾籍の方が、日本に財産を残したまま亡くなるケースがあります。相続人も台湾にいる。日本には財産だけがある。

この組み合わせで押さえるべき点は2つです。 準拠法が台湾法になること。そして、日本の財産の全容を台湾から把握しなければならないことです。

この記事の要点

  • 準拠法は台湾法です。台湾の渉外民事法律適用法第58条が相続を被相続人の本国法によると定めているため、日本法への反致は生じません。
  • 財産の種類によって適用される法律が分かれることはありません。 日本にある不動産も預金も、台湾法で判断します。
  • 相続人の確定には、台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本を用います。
  • 日本にある財産の把握には、2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度が使えます。
  • 台湾の遺産税の申告期限は死亡の翌日から6か月、日本の相続税は10か月です。期限が異なります。

1. 準拠法は台湾法で、分裂しません

日本の法の適用に関する通則法第36条により、被相続人が台湾籍であれば台湾の法律を見ることになります。台湾の渉外民事法律適用法第58条は、相続は被相続人の死亡時の本国法によると規定しており、日本法への反致は生じません。

国によっては、不動産は所在地の法律、動産は別の法律と、財産の種類によって適用される法律が分かれることがあります。台湾法にはその区分がありません。日本にある不動産も預金も、すべて台湾法で判断します。

なお、台湾の渉外民事法律適用法第58条には、台湾の法律により台湾国民が相続人となるべきときは台湾にある遺産について相続する、という趣旨の但書があります。

2. 台湾法での相続人と相続分

台湾民法1138条は、遺産相続人を配偶者のほか次の順位で定めています。

1. 直系卑属 2. 父母 3. 兄弟姉妹 4. 祖父母

相続分については、台湾民法1144条により、配偶者が第一順位の相続人(直系卑属)と共に相続する場合は均等とされています。子が2人いれば配偶者・子・子の3等分です。日本の民法のように配偶者が2分の1を取得するわけではありません。

台湾民法には特留分の制度もあります。条文は改正されることがありますので、実際の適用にあたってはその時点の内容を確認する必要があります。

日本の法務局や金融機関に対しては、台湾法の条文とその日本語訳を提出して説明することになります。

3. 相続人の確定

台湾には戸籍制度があります。被相続人の戸籍謄本・除籍謄本を台湾の戸政事務所で取得し、相続人を確定します。

被相続人が過去に日本に居住していた場合は、日本側にも記録が残っている可能性があります。

  • 住民票の除票
  • 外国人登録原票(2012年7月まで運用されていた制度の記録で、出入国在留管理庁が保管しています)

台湾の書類には日本語訳を添付して日本の提出先に出します。

被相続人が外国籍で日本の戸籍がないため、法定相続情報一覧図は利用できません。 金融機関ごとに証明資料一式を提出することになります。

4. 日本にある財産の把握

被相続人が台湾におられた場合、日本にある財産の全容を相続人が把握できていないことがあります。郵便物を確認できず、どの銀行に口座があったかも分からない、という状態です。

2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度では、被相続人が全国のどこに不動産を所有していたかを法務局に一括照会し、証明書の交付を受けられます。不動産を所有している人またはその相続人が請求でき、全国どこの法務局でも、窓口・郵送・オンラインで請求できます。

未登記建物や、登記上の住所・氏名が現況と一致しない不動産は記録されない可能性があります。

5. 台湾にいる相続人の署名

相続人が台湾籍で台湾在住であれば、台湾の戸政事務所で印鑑証明書を取得できます。遺産分割協議書に印鑑を押し、印鑑証明書を添付する形で進められます。

台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書は、日本の不動産登記手続で使用することができます。

6. 台湾と日本で、税の期限が違います

日本国内にある財産は、被相続人・相続人がいずれも台湾籍・台湾在住であっても、日本の相続税の課税対象です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月です。

一方、台湾の遺産税の申告期限は、被相続人の死亡の翌日から起算して6か月です。台湾の居住者については配偶者控除や直系卑属控除などの控除が設けられており、控除の考え方も日本とは異なります。

2つの国で申告期限が異なるため、それぞれの期限を別々に管理する必要があります。 二重課税の調整については税理士の確認が必要です。

7. 不動産を相続した後のこと

日本に不動産を相続した場合、相続登記(取得を知った日から3年以内、義務)を済ませた後も、固定資産税の納付、建物の管理、近隣への対応が続きます。

さらに、2026年4月1日から住所等変更登記が義務化されています。所有者は住所や氏名等を変更したときは変更があった日から2年以内に登記をしなければならず、正当な理由なく行わない場合は5万円以下の過料の適用対象となります。2026年4月1日より前に住所等を変更していた場合も、2028年3月31日までに変更登記が必要です。

台湾にお住まいのまま日本の不動産を保有し続けるには、これらの負担が続きます。売却する場合は、登記の名義を誰にするかによってその後の手続きが変わります。

8. 期間の見込み

全体で8か月から1年が目安です。

工程目安
準拠法の確認と、台湾法の内容を示す資料の準備1〜2か月
日本にある財産の調査(所有不動産記録証明制度の利用を含む)1〜2か月
台湾の戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書の取得1か月前後
日本語訳の作成数週間
遺産分割協議書の作成と押印、国際郵送1か月前後
相続登記、金融機関ごとの提出と払戻し2〜3か月

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、中国語圏の方に関わる手続きに携わってきました。繁体字・簡体字いずれの中国語にも対応しており、台湾にお住まいの相続人の方とも直接やり取りできます。

  • 準拠法の確認と、台湾法の内容を示す資料の準備
  • 所有不動産記録証明制度を用いた不動産の把握と、金融機関への照会
  • 台湾の戸籍謄本・印鑑証明書の取得の手配と日本語訳
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関ごとの証明資料一式の準備と、解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. 日本にある預金も台湾法で判断するのですか。 A. 台湾の渉外民事法律適用法には財産の種類による区分がないため、日本にある財産はすべて台湾法で判断することになります。

Q. 台湾の遺産税と日本の相続税の両方がかかりますか。 A. 日本国内にある財産は日本の相続税の対象です。台湾の遺産税は台湾に所在する財産が対象となる考え方です。二重課税の調整については税理士にご確認ください。

Q. 被相続人がどこに不動産を持っていたか分かりません。 A. 所有不動産記録証明制度により、法務局に一括して照会できます。相続人からも請求できます。

Q. 日本に来ずに手続きできますか。 A. 預貯金の相続については可能な場合が多くあります。不動産の売却まで行う場合は、代理人を立てるか来日が必要になることがあります。

Q. 相続人全員が台湾にいます。誰が日本の窓口とやり取りしますか。 A. 日本国内の専門家に委任していただくのが一般的です。委任状にも印鑑証明書を添付する形になります。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の国籍・死亡日・最後の居住地と過去の日本での居住歴、相続人の人数・続柄・国籍、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

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