在日台湾人の相続で、相続人も日本に住んでいる場合|台湾法で相続人を判断します
日本に住んでいた台湾籍の方が亡くなり、相続人も日本に住んでいる場合の相続手続きを解説します。相続人は印鑑証明書を使える一方、準拠法は台湾法となり相続分が日本の民法と異なります。一部の相続人が台湾にいる場合の扱いも整理します。
在日台湾人の相続で、相続人も日本に住んでいる場合
日本に長く住んでいた台湾籍の方が亡くなり、配偶者も子も日本に住んでいる。日本に預金や自宅がある——このご家族の相続では、書類よりも先に確認すべきことがあります。
適用されるのは台湾法です。 家族全員が日本で暮らしていても、この結論は変わりません。日本の民法で分けるつもりで協議を進めると、相続分の前提が違うことになります。
この記事の要点
- 被相続人が台湾籍の場合、準拠法は台湾法です。台湾の渉外民事法律適用法第58条が相続を被相続人の本国法によるとしているため、日本法への反致は生じません。
- 台湾民法では、配偶者が子と共に相続する場合、相続分は均等です。日本の民法のように配偶者が2分の1を取得するわけではありません。
- 相続人が日本に住民登録をしていれば、印鑑証明書も住民票も取得できます。
- 被相続人の相続人確定には、台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本を用います。
- 法定相続情報一覧図は利用できません。
1. 準拠法は台湾法です
日本の法の適用に関する通則法第36条は、相続は被相続人の本国法によると定めています。被相続人が台湾籍であれば、台湾の法律を見ることになります。
台湾の渉外民事法律適用法第58条は、相続は被相続人の死亡時の本国法によると規定しています。台湾法が再び台湾法を指すため、日本法に戻る反致は生じません。
被相続人が日本に何十年住んでいたかは、この結論を変えません。
2. 相続分が日本の民法と異なります
台湾民法1138条は、遺産相続人を配偶者のほか次の順位で定めています。
1. 直系卑属 2. 父母 3. 兄弟姉妹 4. 祖父母
順位の構成は日本の民法と似ています。異なるのは相続分です。
台湾民法1144条では、配偶者が第一順位の相続人(直系卑属)と共に相続する場合、相続分は他の相続人と均等とされています。
| 相続人の構成 | 日本法での配偶者の相続分 | 台湾法での配偶者の相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者と子1人 | 2分の1 | 2分の1 |
| 配偶者と子2人 | 2分の1 | 3分の1 |
| 配偶者と子3人 | 2分の1 | 4分の1 |
台湾民法には特留分の制度もあります。法令は改正されることがありますので、実際の適用にあたってはその時点の条文を確認する必要があります。
日本の法務局や金融機関に対しては、台湾法の条文とその日本語訳を提出して説明することになります。
3. 相続人が日本に住んでいることの意味
在留カードや特別永住者証明書を持ち、日本の市区町村に住民登録をしている方は、印鑑登録ができます。
相続人側については、
- 遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付する
- 住所の証明には住民票を使う
という、日本人の相続と同じ形で進められます。署名証明も公証も必要ありません。
4. 被相続人側の相続人確定
被相続人に日本の戸籍はありませんが、台湾には戸籍制度があります。
台湾の戸政事務所で被相続人の戸籍謄本・除籍謄本を取得し、相続人を確定します。日本語訳を添付して日本の提出先に出します。
日本側にも資料があります。
- 住民票の除票:外国籍の方も住民基本台帳に記録されており、世帯構成や在留資格、国籍が記載されています
- 外国人登録原票:2012年7月まで運用されていた外国人登録制度の記録で、現在は出入国在留管理庁が保管しています
- 日本での死亡届の記載事項証明書
特別永住者の方など、日本での居住歴が長い場合は、日本側の記録が充実しています。
法定相続情報一覧図は使えません
法務局の法定相続情報証明制度は、日本の戸籍によって相続関係を証明する仕組みです。被相続人が外国籍で日本の戸籍がない場合は利用できません。金融機関が5つあれば、5か所すべてに証明資料一式を提出します。
5. 相続人の一部が台湾にいる場合
配偶者と子は日本にいるが、被相続人の別の子が台湾にいる、というケースがあります。
| 相続人の居住地 | 署名の証明 | 住所の証明 |
|---|---|---|
| 日本(住民登録あり) | 印鑑証明書 | 住民票 |
| 台湾(台湾籍) | 台湾の戸政事務所が発行する印鑑証明書 | 台湾の戸籍謄本 |
| 台湾(日本国籍) | 日本台湾交流協会の署名証明 | 同協会の在留証明 |
台湾籍で台湾在住の相続人については、台湾にも印鑑登録の制度があるため、印鑑証明書を用いる形で進められます。台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書は、日本の不動産登記手続で使用することができます。
全員分の書類が揃うまで手続きは完了しません。
6. 日本の相続税
日本国内にある財産は、被相続人・相続人の国籍にかかわらず日本の相続税の課税対象です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
台湾法が適用される場合に「法定相続人の数」をどう数えるかは論点になり得ます。申告にあたっては税理士の判断が必要です。
7. 期間の見込み
相続人が全員日本にいる場合、全体で5〜7か月が目安です。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 台湾法の内容を示す資料の準備 | 1か月前後 |
| 住民票の除票、外国人登録原票など日本側資料の取得 | 1〜2か月 |
| 台湾の戸籍謄本・除籍謄本の取得 | 1か月前後 |
| 日本語訳の作成 | 数週間 |
| 遺産分割協議書の作成と押印 | 数週間 |
| 金融機関ごとの証明資料一式の提出と払戻し | 1行あたり1か月前後 |
当事務所の対応
行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、在日外国人の方の在留資格申請をはじめとする手続きに携わってきました。繁体字・簡体字いずれの中国語にも対応しています。
- 台湾法の内容を示す資料の準備
- 住民票の除票・外国人登録原票など日本側資料の調査
- 台湾の戸籍謄本の取得の手配と日本語訳
- 遺産分割協議書の作成
- 金融機関ごとの証明資料一式の準備と、解約・払戻し手続きのサポート
- 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携
よくあるご質問
Q. 家族全員が日本に住んでいるのに台湾の法律が適用されるのですか。 A. 台湾の渉外民事法律適用法が相続を被相続人の本国法によると定めているため、日本法への反致は生じません。居住期間の長短は結論を変えません。
Q. 日本の民法で分けることはできませんか。 A. 相続人全員の合意で分割内容を決めること自体は可能ですが、法定相続分の前提は台湾法によります。
Q. 在留カードや特別永住者証明書があれば印鑑登録できますか。 A. 日本の市区町村に住民登録があれば印鑑登録ができます。
Q. 台湾の戸籍謄本を自分で取りに行けません。 A. 当事務所で取得を手配します。
Q. 日本にある不動産の相続登記はできますか。 A. できます。被相続人が外国籍の場合、必要書類の判断は法務局が行いますので、管轄の法務局に確認して進めます。
お問い合わせ
ご相談の際は、被相続人の国籍・死亡日・来日時期と在留状況、相続人の人数・続柄・居住地、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。
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