外国人社員の入社・退社時に会社が行う手続き【行政書士が解説】
外国人社員の入社・退社時に会社が行う手続きを期限別に整理。ハローワーク届出・社会保険・入管届出・退職証明書・脱退一時金の説明まで、日本人と異なる外国人特有の対応を行政書士が解説します。
外国人社員の入社・退社時の手続きは、基本的に日本人と同じです。ただし「ハローワークへの外国人雇用状況届出」「所属機関の届出」「退職証明書の交付」「脱退一時金の案内」など、外国人特有の対応が加わります。この記事で期限別に整理します。
入社時の手続き一覧
日本人と共通の手続き
- 雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク・翌月10日まで)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(年金事務所・入社後5日以内)
- 労働条件通知書または雇用契約書の交付
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の受領
外国人特有の手続き
#### ①ハローワークへの外国人雇用状況届出(義務)
外国人を雇用した場合は、雇用対策法(労働施策総合推進法)に基づき、ハローワークへの届出が義務付けられています。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象になります。
雇用保険の被保険者となる外国人の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」に国籍・在留資格・在留期間・在留カード番号を記入することで届出を兼ねます。
雇用保険の被保険者とならない外国人(週20時間未満のアルバイトなど)の場合は、「外国人雇用状況通知書」を別途ハローワークに提出します。提出期限は雇入れ日の翌月末日までです。
#### ②所属機関による届出(入管庁・14日以内)
技術・人文知識・国際業務・高度専門職・経営管理・研究・教育など特定の就労在留資格を持つ外国人を雇い入れた機関は、雇入れから14日以内に入管庁長官へ届出を行う義務があります。
ただし労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況届出が義務付けられている機関(ほとんどの一般企業)は、ハローワーク届出をもって入管庁への届出が免除されます。
#### ③在留カードの確認と記録
採用時に在留カードの原本を確認し、在留資格・在留期間・就労制限の内容を確認します。確認日・確認者・確認内容を記録として残してください。
入社後の継続管理
外国人社員の在留期限は定期的に確認する必要があります。
- 在留期限の3か月前を目安に更新手続きの準備を案内する
- 更新申請には通常1〜2か月かかるため、期限直前の申請は避ける
- 更新に必要な会社側の書類(在職証明書・給与証明など)の準備をサポートする
退社時の手続き一覧
日本人と共通の手続き
- 雇用保険被保険者資格喪失届(ハローワーク・退職日翌日から10日以内)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(年金事務所・退職日翌日から5日以内)
- 健康保険証の回収
- 離職票の作成・交付(本人が希望する場合)
- 源泉徴収票の交付(退職後1か月以内)
- 住民税の特別徴収に関する手続き
外国人特有の手続き・対応
#### ①ハローワークへの外国人雇用状況届出(義務)
退職時もハローワークへの届出が必要です。
雇用保険被保険者の場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します(退職日翌日から10日以内)。在留カード番号の記載が必要です。
雇用保険被保険者でない場合は「外国人雇用状況通知書」を離職日の月の翌月末日までに提出します。
#### ②退職証明書の交付(請求があれば義務)
外国人社員から退職証明書の交付を求められた場合は、交付する義務があります(労働基準法第22条)。外国人が転職・在留資格変更の際に入管庁へ提出する書類として使われます。
退職証明書には「使用期間・業務の種類・事業における地位・賃金・退職事由」を記載しますが、退職者が希望しない事項は記載してはいけません。
#### ③外国人本人への説明(義務ではないが推奨)
退職する外国人社員に対して、以下の事項を案内することをお勧めします。
- 所属機関に関する届出(本人が退職日から14日以内に入管庁へ届け出る義務がある)
- 退職後3か月以上就労しない状態が続くと在留資格取消しの対象になる可能性があること
- 帰国する場合は脱退一時金の請求が可能であること
#### ④脱退一時金の説明
厚生年金に6か月以上加入して帰国する外国人は、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求できます。
2026年4月1日以降は、再入国許可の有効期間内は脱退一時金を請求できなくなる制度変更がありました。また支給上限が従来の5年から8年に引き上げられました(2026年4月1日施行)。
期限別チェックリスト
入社時
| 期限 | 手続き | 提出先 |
|---|---|---|
| 入社後5日以内 | 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 | 年金事務所 |
| 翌月10日まで | 雇用保険被保険者資格取得届(外国人雇用状況届出を兼ねる) | ハローワーク |
| 翌月末日まで | 外国人雇用状況通知書(雇用保険非加入者) | ハローワーク |
| 14日以内 | 所属機関による届出(対象機関のみ) | 入管庁 |
退社時
| 期限 | 手続き | 提出先 |
|---|---|---|
| 退職日翌日から5日以内 | 健康保険・厚生年金資格喪失届 | 年金事務所 |
| 退職日翌日から10日以内 | 雇用保険資格喪失届(外国人雇用状況届出を兼ねる) | ハローワーク |
| 翌月末日まで | 外国人雇用状況通知書(雇用保険非加入者) | ハローワーク |
| 請求があれば速やかに | 退職証明書の交付 | 本人へ |
よくある質問
Q. 退職後に外国人本人が届出をしなかった場合、会社に責任はありますか?
A. 所属機関に関する届出は外国人本人の義務であり、会社に法的責任はありません。ただし本人が届出を知らずに不利益を被ることを防ぐため、退社時に案内することが望ましいです。会社側の義務であるハローワーク届出は期限内に確実に行ってください。
Q. アルバイトの外国人が退職した場合も届出は必要ですか?
A. はい、必要です。雇用形態を問わず、外国人を雇用・離職させた際のハローワーク届出は義務です。雇用保険に加入していないアルバイトの場合は、離職日の月の翌月末日までに「外国人雇用状況通知書」を提出してください。
Q. 在留期限が近い外国人社員を採用しようとしています。注意点はありますか?
A. 在留期限まで十分な期間がない場合、採用後すぐに更新手続きが必要になります。更新には1〜2か月かかるため、採用のタイミングと更新申請の準備を並行して進めることが重要です。また更新が不許可になった場合の取り扱いを雇用契約書に明記しておくことをお勧めします。
まとめ
外国人社員の入退社手続きは「日本人と同じ手続き+外国人特有の手続き」で構成されます。特にハローワークへの外国人雇用状況届出は義務であり、怠ると罰金の対象になります。
退社時は退職証明書の交付や、本人への届出・脱退一時金の案内を丁寧に行うことで、後日のトラブルを防ぐことができます。手続きの詳細に不安がある場合は、入管業務を専門とする行政書士または社会保険労務士へのご相談をお勧めします。
本記事は出入国在留管理庁・厚生労働省・日本年金機構の公式情報および実務経験をもとに作成しています。制度の詳細は個別事情により異なります。最新情報は必ず各公式サイトでご確認ください。
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