日本人の親が亡くなり、香港在住の外国籍の相続人がいる場合|公証人の認証で進めます

被相続人が日本人で、相続人が外国籍かつ香港在住の場合の相続手続きを解説します。続柄は日本の戸籍からたどれます。香港には印鑑登録制度がないため、印鑑証明書の代わりに公証人の認証を用います。必要な書類の範囲を整理します。

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日本人の親が亡くなり、香港在住の外国籍の相続人がいる場合

被相続人は日本人で日本に住んでいた。相続人である自分は日本国籍を持たず、香港に住んでいる——国際結婚をされた配偶者の方、日本国籍を取得しなかったお子さん、日本国籍を離脱された方などが該当します。

国籍は相続する権利に影響しません。問題になるのは証明の方法です。

この記事の要点

  • 被相続人が日本人であれば準拠法は日本法です。相続人が外国籍でも、相続人の範囲や相続分は日本の民法で判断します。
  • 相続人の続柄は、日本の戸籍からたどれます。 婚姻も出生も国籍喪失も、被相続人の戸籍に記載されます。
  • 戸籍で分からないのは、香港にいる相続人の現在の氏名・生存・住所です。
  • 香港には印鑑登録制度がないため、印鑑証明書の代わりに公証人(Notary Public)の認証を用います。
  • 在香港日本国総領事館の署名証明は日本国籍の方向けの制度です。制度が使えないのではなく、窓口が違います。

1. 準拠法は日本法です

日本の法の適用に関する通則法では、相続は被相続人の本国法によるとされています。被相続人が日本国籍であれば日本法です。

相続人が外国籍であること、香港に居住していることは、相続人の範囲にも相続分にも影響しません。日本の民法は相続人の国籍を要件としていません。

2. 相続人の確定は戸籍でできます

相続人が外国籍であっても、被相続人が日本人であれば、続柄は日本の戸籍からたどれます。

出来事戸籍への記載
外国籍の方との婚姻日本人配偶者の身分事項欄に、配偶者の氏名・国籍・生年月日とともに記載
子の出生親の身分事項欄に記載。子が日本国籍を持てば戸籍の構成員となる
日本国籍の離脱・喪失国籍喪失の事由と日付が記載され、その者は除籍される

外国籍の配偶者がいることも、日本国籍を離脱したお子さんがいることも、被相続人の戸籍を見れば分かります。

戸籍で分からないこと

日本の戸籍は、外国籍の方のその後の身分関係を追いかけません。現在も生存しているか、氏名が変わっていないか、現在の住所はどこかは、日本の戸籍からは確認できません。

香港には戸籍にあたる制度がないため、その部分は次の資料で補います。

  • 香港身分証、パスポート
  • 入境事務處が発行する出生・婚姻・死亡に関する登記記録
  • 公証人の面前で作成する宣誓供述書(Statutory Declaration)

宣誓供述書には、相続人の範囲や被相続人との続柄などを記載します。記載すべき内容は提出先によって異なります。 汎用のひな形をそのまま使うと受理されないことがあります。当事務所では、日本側の金融機関・法務局が求める記載事項を確認したうえで文案を作成します。

3. 署名証明を、どこで取得するか

印鑑登録証明書の代わりになるのは署名の証明です。相続人が日本国籍でも外国籍でも、実印と印鑑証明書の代わりに署名とその証明を用いるという点は変わりません。

違うのは発行元です。

相続人の国籍発行元
日本国籍在香港日本国総領事館
日本国籍以外香港の公証人(Notary Public)

在香港日本国総領事館の署名証明は日本国籍の方向けの制度です。外国籍の相続人は、香港の公証人の面前で署名し、認証を受けることになります。

遺産分割協議書の完成は前提ではありません

公証人の認証には、日本語の遺産分割協議書に署名して認証を受ける形と、署名そのものについて認証を受ける形があります。後者は、協議書が完成していなくても取得できます。

中国委託公証人とは別です

香港には、中国本土向けの文書を扱う中国委託公証人(China-Appointed Attesting Officer)という制度があります。日本向けの書類で用いるのは通常の公証人による認証です。

アポスティーユ

日本の法務局や金融機関は、公証人の認証書に日本語訳を添えれば受理するのが一般的で、アポスティーユまで求められる場面は限られます。取得が必要になった場合は、香港の高等法院で発行を受けられます。

4. 住所の証明

日本国籍の方が使える在留証明は、外国籍の方は利用できません。不動産の相続登記など、相続人の住所の証明が求められる場面では、公証人が作成する住所に関する証明などで代替します。何が必要になるかは提出先によって異なります。

5. 日本国籍を離脱された方の場合

かつて日本人であった方は、除籍に国籍喪失の記載が残ります。被相続人との親子関係は日本の戸籍でたどれるため、続柄の証明は容易です。

論点になるのは、現在の氏名が戸籍の記載と一致しているかどうかです。氏名の表記が変わっている場合は、同一人であることを示す資料が必要になります。

6. 受け取り方

日本の預貯金の払戻しは、原則として日本国内の口座への振込みです。香港在住の相続人が日本に口座を持っていない場合、海外送金に対応してもらえるかは金融機関ごとに異なります。

7. 相続税

日本国内にある財産は、相続人の国籍・住所にかかわらず日本の相続税の課税対象です。香港在住であることを理由に対象外になることはありません。

国外にある財産まで日本の課税対象になるかどうかは、被相続人と相続人それぞれの住所・国籍・過去の居住歴によって変わります。相続人が外国籍で国外に居住している場合、判定が必要な論点です。

8. 期間の見込み

全体で5〜7か月が目安です。

工程目安
日本での戸籍収集、財産調査1〜2か月
戸籍で足りない部分の切り分けと、宣誓供述書の文案の確定数週間
香港での公証人の認証数週間
日本語訳の作成と国際郵送数週間
金融機関ごとの提出と払戻し1行あたり2週間〜1か月

宣誓供述書の記載内容に不備があって作り直しになると、さらに1か月前後が加わります。

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、在留資格申請をはじめとする手続きに携わってきました。国際結婚や国籍に関する書類を日常的に扱っており、日本語・中国語・英語での対応が可能です。

  • 戸籍で足りる部分と、香港側の資料で補う部分の切り分け
  • 提出先の要件に合わせた宣誓供述書の文案の作成
  • 日本国内での戸籍収集と相続関係説明図の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関の解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. 外国籍でも日本の遺産を相続できますか。 A. できます。日本の民法は相続人の国籍を要件としていません。

Q. 在香港日本国総領事館で署名証明を受けられますか。 A. 総領事館の署名証明は日本国籍の方向けの制度です。外国籍の方は香港の公証人の認証を用います。署名証明を使うこと自体は同じで、窓口が違います。

Q. 宣誓供述書には何を書きますか。 A. 相続人の範囲、被相続人との続柄などが中心になりますが、提出先によって求められる内容が異なります。

Q. 相続人が日本と香港に分かれています。 A. 相続人の居住地が分かれていても手続きは進められます。それぞれ異なる書類で同じ協議書に参加します。

Q. 香港にも相続税はかかりますか。 A. 香港の遺産税は2006年に廃止されています。日本国内にある財産には日本の相続税が課される可能性があり、判定は税理士による確認が必要です。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の死亡日、ご自身の国籍と被相続人との続柄、国籍取得や離脱の経緯、現在の氏名が戸籍の記載と一致しているか、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

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