香港在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合|相続人も香港にいるケース

被相続人が香港に住んでいて、日本に不動産や預金だけが残っている場合の相続手続きを解説します。香港法は動産と不動産で適用される法律を分けるため、日本の不動産は日本法、預金は香港法と判断が分かれる可能性があります。

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香港在住だった親が日本に財産を残して亡くなった場合

かつて日本で暮らしていた、あるいは日本に投資用の不動産を持っていた。そうした経緯で、香港にお住まいだった方が、日本に財産を残したまま亡くなるケースがあります。相続人も香港にいる。日本には財産だけがある。

この組み合わせでは、日本にある財産の種類によって、適用される法律が分かれる可能性があります。 「日本にある財産だから日本の民法で分ければよい」という前提で協議書を作ると、法務局や金融機関で止まることになります。

この記事の要点

  • 香港に居住していた方については、香港の法律を本国法として扱います。
  • 香港法は、動産は被相続人の死亡時の住所地(domicile)の法、不動産は所在地の法によるという分け方をとります。
  • 被相続人の住所地が香港であった場合、日本にある不動産は日本法、日本にある預金は香港法という分かれ方が生じ得ます。
  • 英米法圏は遺産の清算と分配という構造をとるため、日本の遺産分割協議の枠組みがそのまま当てはまりません。提出先ごとに求められる書類が異なります。
  • 日本にある財産の把握には、2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度が使えます。

1. 財産の種類で判断が分かれます

日本の法の適用に関する通則法第36条により、被相続人の本国法を見ることになります。香港に居住していた方については、香港の法律を本国法として扱う整理になります。

香港法は、相続財産を動産と不動産に分けます。

日本にある財産適用される法律の方向
不動産(土地・建物)所在地法として日本法
預貯金などの動産住所地法として香港法

日本のように一つの法律で相続全体を処理する方式とは異なる結果が生じます。

香港をはじめとする英米法圏では、遺産をいったん人格代表者に帰属させ、債務を清算したうえで受益者に分配するという構造をとります。相続人全員が共有し、全員の合意で分割するという日本の遺産分割協議に対応する仕組みではありません。

日本の金融機関や法務局に何を提出するかは、提出先ごとに扱いが異なります。 香港の承継の許可の提出を求められる場合もあれば、日本の実務に沿った書類で処理できる場合もあります。提出先への確認が前提になります。

住所地(domicile)の判断

香港法で動産の準拠法を決めるのは、被相続人の死亡時の住所地です。住所地は、単に住んでいた場所を指すのではなく、そこに定住する意思を含めて判断される概念です。

長年香港に住んでいても、日本に生活の本拠を残していたと判断される場合があります。逆に、日本国籍のまま香港に定住していた方について、住所地が香港と判断される場合もあります。この判断は、日本にある預金にどちらの法律が適用されるかを左右します。

2. 香港法が適用される部分について

香港の無遺言相続では、配偶者と子の取り分の決め方が日本の民法とは異なります。金額を基準とする部分があり、相続財産の規模によって配分が変わる仕組みです。

日本の法務局や金融機関に対しては、香港法ではどのような相続人の範囲・取り分になるのか、その根拠は何かを示すことになります。実務上は、条文とその日本語訳を提出します。

日本人の相続なら戸籍を出せば済むところが、香港法が適用される部分については「その地域の法律の内容を証明する」作業が加わります。

3. 相続人の確定

香港には戸籍にあたる制度がありません。次の資料を組み合わせて相続関係を証明します。

  • 入境事務處が発行する出生登記記録、婚姻登記記録、死亡登記記録
  • 香港身分証
  • 公証人の面前で作成する宣誓供述書(Statutory Declaration)

宣誓供述書の記載内容は提出先によって異なります。当事務所では、日本側の金融機関・法務局が求める記載事項を確認したうえで文案を作成します。

被相続人が過去に日本に居住していた場合は、日本側にも記録が残っている可能性があります。住民票の除票や、出入国在留管理庁が保管する外国人登録原票が資料になります。

被相続人が外国籍で日本の戸籍がないため、法定相続情報一覧図は利用できません。

4. 日本にある財産の把握

被相続人が香港におられた場合、日本にある財産の全容を相続人が把握できていないことがあります。郵便物を確認できず、どの銀行に口座があったかも分からない、という状態です。

2026年2月2日から運用が始まった所有不動産記録証明制度では、被相続人が全国のどこに不動産を所有していたかを法務局に一括照会し、証明書の交付を受けられます。不動産を所有している人またはその相続人が請求でき、全国どこの法務局でも、窓口・郵送・オンラインで請求できます。

未登記建物や、登記上の住所・氏名が現況と一致しない不動産は記録されない可能性があります。

5. 香港の遺産手続きとは別です

香港では、遺産を承継するために遺產承辦處で承継の許可(Grant of Probate または Letters of Administration)を得る手続きがあります。この許可は、日本にある財産には直接の効力を持ちません。

日本と香港の両方に財産がある場合は、2つの手続きを並行して進めることになります。

6. 日本の相続税

日本国内にある財産は、被相続人・相続人がいずれも香港在住であっても、日本の相続税の課税対象です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月です。

香港の遺産税は2006年に廃止されています。日本側の課税範囲の判定は税理士による確認が必要です。

7. 不動産を相続した後のこと

日本に不動産を相続した場合、相続登記(取得を知った日から3年以内、義務)を済ませた後も、固定資産税の納付、建物の管理、近隣への対応が続きます。

さらに、2026年4月1日から住所等変更登記が義務化されています。所有者は住所や氏名等を変更したときは変更があった日から2年以内に登記をしなければならず、正当な理由なく行わない場合は5万円以下の過料の適用対象となります。2026年4月1日より前に住所等を変更していた場合も、2028年3月31日までに変更登記が必要です。

8. 期間の見込み

全体で8か月から1年が目安です。

工程目安
住所地の判断と準拠法の切り分け1〜2か月
日本にある財産の調査(所有不動産記録証明制度の利用を含む)1〜2か月
香港の登記記録の取得1か月前後
宣誓供述書の文案の確定と公証人の認証1〜2か月
香港法の内容を示す資料の準備1〜2か月
相続登記、金融機関ごとの提出と払戻し2〜3か月

提出先が香港の承継の許可を求める場合、その取得期間が加わります。

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、海外との往来がある方の手続きに携わってきました。日本語・中国語・英語での対応が可能です。

  • 準拠法の切り分け(どの財産に日本法・香港法が適用され得るか)の整理
  • 所有不動産記録証明制度を用いた不動産の把握と、金融機関への照会
  • 提出先の要件に合わせた宣誓供述書の文案の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関ごとの証明資料一式の準備と、解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. 日本にある預金も日本の民法で分けてよいのではないですか。 A. 被相続人の住所地が香港であった場合、預金などの動産については香港法で判断される余地があります。協議書を作る前の確認が必要です。

Q. 住所地が香港か日本かの判断はどう行いますか。 A. 居住期間だけでなく、生活の実態、日本との結びつき、住民登録の記録などを総合して判断します。

Q. 被相続人がどこに不動産を持っていたか分かりません。 A. 所有不動産記録証明制度により、法務局に一括して照会できます。相続人からも請求できます。

Q. 日本に来ずに手続きできますか。 A. 預貯金の相続については可能な場合が多くあります。不動産の売却まで行う場合は、代理人を立てるか来日が必要になることがあります。

Q. 相続人全員が香港にいます。誰が日本の窓口とやり取りしますか。 A. 日本国内の専門家に委任していただくのが一般的です。委任状についても公証人の認証が必要になります。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の国籍・死亡日・最後の居住地と過去の日本での居住歴、相続人の人数・続柄・国籍、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

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