在日香港人の相続で、相続人も日本に住んでいる場合|難所は被相続人側だけです

日本に住んでいた香港籍の方が亡くなり、相続人も日本に住んでいる場合の相続手続きを解説します。相続人は印鑑証明書を使える一方、香港には戸籍がないため被相続人側の相続人確定に手間がかかります。一部の相続人が香港にいる場合の扱いも整理します。

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在日香港人の相続で、相続人も日本に住んでいる場合

日本に長く住んでいた香港籍の方が亡くなり、配偶者も子も日本に住んでいる。日本に預金や自宅がある——このご家族の相続では、海外との書類のやり取りはほとんど発生しません。

難所は一つで、被相続人に日本の戸籍がなく、香港にも戸籍にあたる制度がないことです。

この記事の要点

  • 香港に居住していた方については、香港の法律を本国法として扱います。
  • 香港法は、動産は被相続人の死亡時の住所地(domicile)の法、不動産は所在地の法によるという分け方をとります。被相続人が日本に生活の本拠を置いていた場合、いずれの経路をたどっても日本法に行き着く方向になります。
  • 相続人が日本に住民登録をしていれば、印鑑証明書も住民票も取得できます。 署名まわりは日本人の相続と同じです。
  • 香港には戸籍にあたる制度がないため、相続人の確定は複数の書類を組み合わせて行います。
  • 法定相続情報一覧図は利用できません。

1. 準拠法

日本の法の適用に関する通則法第36条は、相続は被相続人の本国法によると定めています。香港に居住していた方については、香港の法律を本国法として扱う整理になります。

香港法は、相続財産を動産と不動産に分け、動産は被相続人の死亡時の住所地(domicile)の法、不動産はその所在地の法によるという考え方をとります。

被相続人が日本に生活の本拠を置いていた場合、

  • 日本にある不動産は、所在地法として日本法
  • 預貯金などの動産は、住所地法として日本法

となり、いずれも日本法に行き着く方向になります。相続人の範囲と相続分は日本の民法で判断することになります。

住所地(domicile)の判断は居住期間だけで決まるものではありません。在留資格の種類、生活の実態、香港との結びつきの強さを確認したうえで判断します。

2. 相続人が日本に住んでいることの意味

在留カードを持ち日本の市区町村に住民登録をしている方は、印鑑登録ができます。

相続人側については、

  • 遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付する
  • 住所の証明には住民票を使う

という、日本人の相続と同じ形で進められます。公証人の認証は必要ありません。

3. 被相続人側の相続人確定

被相続人に日本の戸籍はなく、香港にも戸籍にあたる制度がありません。次の資料を組み合わせて相続関係を証明します。

日本側で取得できる資料

  • 住民票の除票:外国籍の方も住民基本台帳に記録されており、世帯構成や在留資格、国籍が記載されています
  • 外国人登録原票:2012年7月まで運用されていた外国人登録制度の記録で、現在は出入国在留管理庁が保管しています
  • 日本での死亡届の記載事項証明書

日本での居住歴が長いほど、日本側の記録が充実しています。

香港側で取得する資料

  • 入境事務處が発行する出生登記記録、婚姻登記記録
  • 香港身分証などの本人確認資料
  • 公証人の面前で作成する宣誓供述書(Statutory Declaration)

香港では「この人の相続人はこの3人で全員です」ということを一つの書類で示すことができません。宣誓供述書に何を記載するかが、手続きの成否を分けます。 記載内容は提出先によって異なります。

日本語訳を添付して日本の提出先に出します。アポスティーユは、提出先が求めた場合にのみ取得すれば足ります。

法定相続情報一覧図は使えません

法務局の法定相続情報証明制度は、日本の戸籍によって相続関係を証明する仕組みです。被相続人が外国籍で日本の戸籍がない場合は利用できません。金融機関が5つあれば、5か所すべてに証明資料一式を提出します。

4. 相続人の一部が香港にいる場合

配偶者と子は日本にいるが、被相続人の別の子が香港にいる、というケースがあります。

相続人の居住地署名の証明住所の証明
日本(住民登録あり)印鑑証明書住民票
香港(日本国籍以外)公証人の認証下記のとおり
香港(日本国籍)在香港日本国総領事館の署名証明同総領事館の在留証明

香港にいる相続人が日本の不動産を相続して所有権の登記名義人となる場合の住所証明については、令和5年12月15日付け法務省民二第1596号通達(令和6年4月1日以後の申請に適用)が取扱いを定めています。本国または居住国の政府が作成した住所を証明する書面か、公証人が認証した宣誓供述書と旅券の写しのいずれかを添付します。

全員分の書類が揃うまで手続きは完了しません。

5. 日本の相続税

日本国内にある財産は、被相続人・相続人の国籍にかかわらず日本の相続税の課税対象です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。

香港の遺産税は2006年に廃止されています。国外財産の扱いを含めた課税範囲の判定は、税理士による確認が必要です。

6. 期間の見込み

相続人が全員日本にいる場合、全体で5〜8か月が目安です。

工程目安
住所地(domicile)の判断と準拠法の確認1か月前後
住民票の除票、外国人登録原票など日本側資料の取得1〜2か月
香港の登記記録の取得1か月前後
宣誓供述書の文案の確定と公証人の認証1〜2か月
遺産分割協議書の作成と押印数週間
金融機関ごとの証明資料一式の提出と払戻し1行あたり1か月前後

当事務所の対応

行政書士アーチ事務所は、大阪を拠点に15年以上、在日外国人の方の在留資格申請をはじめとする手続きに携わってきました。日本語・中国語・英語での対応が可能です。

  • 住所地の判断に必要な在留状況の整理
  • 住民票の除票・外国人登録原票など日本側資料の調査
  • 提出先の要件に合わせた宣誓供述書の文案の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関ごとの証明資料一式の準備と、解約・払戻し手続きのサポート
  • 相続登記が必要な場合の司法書士、相続税申告が必要な場合の税理士との連携

よくあるご質問

Q. 家族全員が日本に住んでいます。日本人と同じように進められますか。 A. 相続人側の書類は日本人と同じです。被相続人に日本の戸籍がないため、相続人の確定に香港側の書類が必要になる点が異なります。

Q. 在留カードがあれば印鑑登録できますか。 A. 日本の市区町村に住民登録があれば印鑑登録ができます。

Q. 宣誓供述書には何を書きますか。 A. 相続人の範囲、被相続人との続柄などが中心になりますが、提出先によって求められる内容が異なります。

Q. 被相続人が日本に帰化していた場合は。 A. 死亡時に日本国籍であれば日本法が本国法となり、日本の戸籍も存在します。帰化前の親族関係を示すために香港側の資料が必要になることがあります。

Q. 日本にある不動産の相続登記はできますか。 A. できます。被相続人が外国籍の場合、必要書類の判断は法務局が行いますので、管轄の法務局に確認して進めます。

お問い合わせ

ご相談の際は、被相続人の国籍・死亡日・来日時期と在留状況、相続人の人数・続柄・居住地、日本にある財産の種類をご用意ください。日本語・中国語どちらでも対応いたします。

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