育成就労で不備になりやすい記録管理・賃金台帳・面談記録
育成就労制度の外部監査・行政指導で指摘されやすい記録管理の不備ポイントを解説。賃金台帳・面談記録・巡回監査記録の実務的な整備方法をまとめます。
育成就労制度では、監理支援機関・受入れ企業ともに多岐にわたる書類・記録の整備が求められます。外部監査や行政機関による指導・調査では、書類の有無だけでなく記録の内容・整合性・保管状況まで確認されます。技能実習制度の運用でも記録不備は頻出の指摘事項でしたが、育成就労制度では外部監査人の役割が強化されたことで、記録管理の重要性はさらに高まっています。
賃金台帳の不備
賃金台帳は外部監査・行政調査の双方で必ず確認される書類です。不備が生じやすいポイントは以下のとおりです。
育成就労計画に記載した賃金水準と実際の支払い額が一致していないケースがあります。計画認定後に賃金水準を変更した場合は計画変更手続きが必要であり、無断で変更すると法令違反となります。
控除項目の不透明さも指摘されやすい点です。宿舎費・食費・光熱費などを賃金から控除する場合、事前に書面で説明し本人の同意を得たうえで控除額を明示する必要があります。同意書がない・控除根拠が不明確な場合は不当控除とみなされるリスクがあります。
時間外労働の計算誤りも多く見られます。割増賃金の計算基礎に含めるべき手当を除外していたり、時間外労働時間の集計が実態と乖離しているケースがあります。
支払い方法については、口座振込が原則です。現金払いの場合は受領書の整備が必要であり、証跡がない場合は支払い事実の確認ができません。
面談記録の不備
監理支援機関が育成就労外国人と行う面談は、記録として残すことが義務付けられています。実務上、以下の不備が生じやすいです。
面談を実施したが記録を残していない、または記録の作成が大幅に遅延しているケースがあります。面談直後に記録を作成する運用を徹底する必要があります。
記録内容が画一的・形式的である場合も指摘対象となります。「特になし」「問題なし」のみの記録では面談の実施内容を確認できません。就労状況・生活状況・相談内容・育成就労計画の進捗など、具体的な内容が記載されている必要があります。
面談者・通訳の記載漏れも多い不備の一つです。誰が・誰と・どの言語で面談したかを明記してください。
育成就労外国人のサインまたは確認印が取得されていない場合も、面談の実施事実を証明する観点から問題となり得ます。
巡回監査記録の不備
監理支援機関は受入れ企業に対して3か月に1回以上の監査・巡回指導を実施する義務があります。記録管理での不備として多いのは以下の点です。
実施頻度の不足です。業務多忙を理由に監査が遅れ、3か月を超えてしまうケースがあります。監査スケジュールをあらかじめ年間計画として設定し、管理することが重要です。
監査記録の記載が不十分なケースもあります。訪問日時・訪問先・確認事項・確認結果・指導内容・是正期限などが明記されている必要があります。訪問したことを示す証跡(担当者署名・写真等)も保管しておくことが望ましいです。
是正指示を行ったにもかかわらず、是正状況の追跡記録がないケースも指摘対象となります。指摘した問題が実際に解消されたかの確認と記録が必要です。
日本語能力に関する記録の不備
育成就労制度では日本語能力要件が段階的に設定されており、関連記録の整備も求められます。
就労開始前の日本語講習受講記録または試験合格証明の保管が必要です。就労開始後1年経過時の試験受験記録、育成就労終了時のA2相当以上の合格証明も保管対象です。試験の受験勧奨・申込みサポートを行った記録も残しておくことが望ましいです。
転籍関連記録の不備
転籍申出を受けた場合の対応記録が整備されていないケースも不備となります。申出を受けた日時・申出内容・監理支援機関への通知日時・その後の対応経緯を記録として残す必要があります。
転籍申出への対応を怠った場合は育成就労法112条に基づく罰金が科されます。対応フローと記録様式をあらかじめ整備しておくことが重要です。
よくある質問
Q. 記録書類の保管期間はどのくらいですか?
育成就労制度の運用要領に基づく保管期間を確認してください。技能実習制度では帳簿書類を3年間保管することが義務付けられていました。育成就労制度でも同程度以上の保管期間が求められる見込みです。
Q. 面談記録は紙で保管する必要がありますか?
電磁的記録による保管も認められています。ただし、いつでも印刷・提示できる状態で管理していることが前提です。クラウド管理の場合もアクセス権限の管理を適切に行ってください。
Q. 外国人本人が日本語を十分に理解できない場合の面談記録はどうすればよいですか?
母国語等での面談を行い、通訳者の氏名・使用言語を記録に明記してください。通訳者が外部の場合はその所属・関係も記載することが望ましいです。
Q. 賃金台帳の控除項目について、あらかじめ整備すべき書類はありますか?
労使協定(賃金控除に関する協定書)の締結、控除内容・金額の書面による説明、本人の同意書が必要です。これらが整備されていない状態での控除は不当控除とみなされるリスクがあります。
行政書士アーチ事務所は、技能実習制度における外部監査の実績をもとに、育成就労制度でも監理支援機関の外部監査人として対応しています。記録管理体制の整備・点検についてもご相談を承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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